幸福な食卓 瀬尾まいこ ★★☆
「大きなものをなくしても、まだあった、大切なもの。」
とっても切なくて、ちょっとおかしくて、あったまる。 いま最注目の作家が放つ、心にふわりと響く長編小説!
「父さんは今日で父さんをやめようと思う」。・・・父さんの衝撃的な一言で始まる本作品は、いま最注目の新鋭作家・瀬尾まいこ氏による4作目となる長編小説であるとともに、主人公・佐和子の中学~高校時代にかけての4編の連作による構成となっています。 佐和子の“少しヘン”な家族(父さんをやめた父さん、家出中なのに料理を持ち寄りにくる母さん、元天才児の兄・直ちゃん)、そして佐和子のボーイフレンド、兄のガールフレンドを中心に、あたたかくて懐かしくてちょっと笑える、それなのに泣けてくる、“優しすぎる”ストーリーが繰り広げられていきます。
吉川英治文学新人賞を満場一致で受賞した本作。
またも、帯につられて買ってしまった。
「ドラマ作りの名手によるパーフェクトな小説」(浅田次郎氏)
「一頁ごとに「或る重み」が伝わってきた。大変な才能である」(伊集院静氏)
「自分の子供に読ませたいと強く思った」(大沢在昌氏)
「物書きとしての勇気を感じさせる。すばらしい。」(高橋克彦氏)
「主人公の内面の変化に胸打たれる。泣きました。」(宮部みゆき氏)
こんなことが、帯に堂々と書かれていたら、
惹かれないわけがない。
・・・のだけど、最近この手の販売戦略多すぎて、ちょっと信頼度が薄れてる気がする。
とか言いつつも、買ってしまうのだけどね。
なんか選評委員の絶賛がつらつらと書かれているものほど、
肩透かしを食らうことが多いような気がする、
と、本書を読んでいて初めて気がついたし。
なぜなら、前半、はっきり言ってつまらなかったから。
丁寧だし、上手とも思う。
それに、兄や父や母やその他もろもろの登場人物たちのキャラが、
いそうでいなそうな暖かな感じがとてもいい。
なのに、なぜだろう?あまり面白いと思えなかった。
というか、面白い話ではないから、面白いと思えなくてもいいんだけど、
なんか冷めた目で眺めてしまって、
読書の楽しさを味わい始められるまでにえらく時間のかかる作品だった。
きっと、主人公の内面はうまく描かれているけれど、
主人公自身に共感しにくいというか、
いい意味でも悪い意味でも児童文学という感じのテーマだからダメだったのかなぁ?
でも、石田衣良の直木賞受賞作「4TEEN」の時はそんな違和感なかったしなぁ・・・。
確かに最後まで読んでみると、なるほどいい小説だな、とは思えた。
決して幸福なことばかり描かれているわけじゃなくて、
むしろ、家族それぞれの他人から見たらちっぽけに移りがちな
些細だけれど、本人にとっては大きな、深刻な、悩みや壁をシリアスに描かれているのだけれど、
それでもなぜだか、暖かくて、幸福という言葉がぴったりくる作品であった。
タイトルのつけ方は完璧としか言いようがないくらい。
ただ、なんていうか、全肯定できない何かもあるんだよな、確実に。
クライマックス以後の主人公の心情描写は実に巧みだし、
それだけで、作品への評価がぐんとアップしたのは確かだし、
こういうクライマックスじゃなければ、
普通の小説、どこにでもある小説だったかもしれない。
けど、このクライマックスはあざといと思います。
というかベタすぎます。
読んだ瞬間、サササーっと私の中で何かが引いていってしまいました。
これは私のピュアさが足りないから?
それとも、同じように感じた人っているのかなぁ?・・・すごく気になるかも。
せっかく新鮮な本を読んだ気がしてたのに、
このせいで、新鮮味がなくなってしまったというか。
まぁ、それは目をつぶったとしても、
その後の主人公の巧みな心情描写は、
10代後半や、20代前半の若手作家ならともかく、
30すぎの著者がここまで10代の心理を書き起こせるのは、
本当に凄いことだと思うのです。
それだけで、凄い作家だなぁと、ほんのちょっぴり思ったり、
中学の現役国語教師というプロフィールを見て、なるほどねと思ったり
と、そんな感じだったんだけど、
でもなぜか、どこか釈然としないものが残って、
読後感がいいはずの秀悦な作品なのに、
すごく微妙な読後感なのです、今現在。
なんでなのかな?
私はなんで釈然としないんだろう?
読み終わって、ネットゲームをしながら黙々と考えました。
結論。
著者はうますぎるからダメなんだ。
高校生の主人公の心情描写は、
上手に、きれいに描かれている、それがダメなんだと。
多分、きれいすぎて、心の奥底でどっか気持ち悪いような、
何かがつかえてるような、妙な感じがぐるぐるとしちゃってるんですね、私の中で。
もっと下手に書くことも出来たろうに、と思うから余計にそう感じるんだな、きっと。
非常に計算しつくされて書かれているだけに、
計算しすぎな感じが、最後になって全面に押し出されちゃったように、
そんな風に私自身は感じてしまうのでした。
でも、こういう風に思うのは、私が今の年齢だからであって、
もし中学生とか高校生くらいのときに読んでいたら、
泣いてたのかなとも思うし、うーん・・・・。
今自分が感じている気持ちを、自分のために書きとめておきたかったのだけれど、
上手く書くことができない。
だから、もし、本作を読んで、ものすごく感動したって人が読んだら、
気分を害されるかもしれないけれど、
いい作家だし、いい作品とは思ってますので誤解なきよう・・・。
ただ、どんな違和だったのか自己分析してみたかっただけなので。
でも確かに、大沢氏の言うように、中高生に読ませたい本ですね。
というより私の場合、中高生がこれを読んでどう感じるのか知りたいという感じ。
