7月12日(水)
仕事場に必要な指示・連絡を終えて、いざ入院。
右腕が三角巾状態なので、左手だけで黙々とバッグに詰め込み準備しました。
夫ですか?その間TVのプロ野球観てましたよ。
彼の名誉のために一応説明しますと、夫は何というか、とにかく「ちょうどいい」感じにならないのですよ。
めちゃくちゃ世話焼きモードで私のシャンプーを手伝おうとしたり(実は左手でなんとかなるので不要)、通勤の送迎をしようとしたり(脚は大丈夫だから不要)。
「助けが必要ならそう言うから大丈夫」と伝えると、「そ、そうか・・・」と急にあっさり放置されるという。極端なんですね。
汗をふうふうかいてゼーハー言いながら家の1F~2Fを行き来して入院支度をしているワタシに「何か手伝おうか」とか声掛けすることもないわけです。
そこは空気読んでくれ。「大丈夫?」と気にしてくれ!と思いますが、ま、私の指示が明確でないのが悪いんですね。社員教育にも通ずる反省であります。
そして手術。
昭和を生きた私は
「あー前日の夜から夕食も無くて水も飲んじゃだめなんだろうなあ」などと思っていたのですが、
きちんと前日しっかりした夕食が出ました。そして果汁風味の栄養ドリンクを渡され、「空腹を抑えて栄養補給するためのものです。明日、手術は昼すぎですが朝10時までなら飲んでいいです」
おーありがたい。そういう時代になっていたのですね。
7月13日(木)
手術室のあの冷たい空気。主治医ヒデカズ以外にも数人の男性医師、女性看護師がものものしく私を迎えます。
緊張MAX。
手術は全身麻酔。点滴に「麻酔のお薬入れますねー」と言われて数秒後には意識を無くしてました。早い。
・・・・・
「すみれさん、すみれさーん、終わりましたよ~」
主治医ヒデカズのマスクをした顔。そうか、ここは病院か。そうだ。手術受けたんだっけ。
ヒデカズ以外の何人もの医師の顔。皆マスクの眼が笑顔。ということは特に問題なく終わったのか。
途端に何か言わなくちゃ、という衝動にかられ、
「せんせえがた・・・ありがとうございました」と朦朧とした意識、声にならない声、回らない舌で言ってみる。
「いいえー」「はーい大丈夫ですよー」とくすくす笑いながら返事が返ってくる。
終わった。終わったんだ・・・涙
ともあれ一安心だよ、すみれ・・・良く頑張ったね・・・
と! その時!
麻酔が効くのが早ければ解けるのも早い!
ストレッチャーが病室に向かう廊下ですでに覚醒。
「なにこれー!」
右腕が「やりすぎでしょ」というくらい直径30センチほどの包帯で巻かれ、上から吊られてます。シュラスコかと思いました。
そしてその瞬間、自分史上最大の激痛がドクドクドクドクズキズキズキズキ!
痛い。痛いよお!
病室に着いて痛みを訴え、座薬やら注射やらでなんとか息を吹き返します。
痛みが去ると看護師さんとの会話にもようやく心の余裕が。
その夜担当の看護師さん。40歳くらいのベテラン。
お笑い芸人「北陽」の虻川さん=アブちゃんにそっくりです。
ところで。
ワタシ、初対面の人とも割と話がはずむ・・・というか、気が付くと「聴いて受ける役」に徹することが多いです。
若い頃から現在に至るまで、友人はどちらかといえばおしゃべりで自分の事を一方的に話すことが好きなタイプ。
私はもっぱら「へえー」「ふんふん」「それでどうなったの」とあいづち打ちながら相手の話を発展させる役です。
処世術な部分もありますが、相手が楽しそうに話すのを見るのがウレシイと感じる妙なサービス精神のなせる業かもしれません。
この夜もそんな感じの間合いでした。看護師アブちゃんとの会話。
アブ「知ってます?今日から新ドラマ始まるんですよー私楽しみにしてるんです」
私 「面白そうですね。何ていうドラマですか?」
アブ「えーと。あーなんだったっけ。忘れちゃった。シルビアとかなんとか。」
私 「シルビア。どんな内容なんですか?」
アブ「えーとなんだっけ。良くわかんないけど、なんかおしゃれっぽいやつです」
私 「ほう。ファッショナブルな感じなんでしょうかね」
アブ「あーそうそうそうなんですよー!なんかモデルが舞台みたいな。私すっごく楽しみ!」
私 「いいですねえ。誰が演じるんですか?」
アブ「あー誰だっけ。忘れちゃった」
・・・これほどすさまじく情報量の少ない中でも対象を探り当てられる素晴らしい時代になりました。
痛みが和らいで気持ちに余裕が出た私。ドラマには正直興味ないにも関わらず、アブが薬を取りに行った間にスマホで検索。
私 「『セシルのもくろみ』ですね?真木よう子さんの」
アブ「あーそれそれ!すみれさんすごい!そうかセシルか。やだ惜しい~」
惜しくない。惜しくないよアブちゃん!シルビアとセシル・・・「シル」しかかすってないよ!
それでも看護師アブちゃんが楽しそうに笑っているだけでなんだか患者の私も心やすらぐのでした。
(つづく)