碁盤の裏側に 四角いへこみがある。
碁石を打つ音がよくなる 「 音受け 」という。
一方で 盤の内部の水分を外に逃がし ひびや歪みができないためともいう。
俗に 「 血だまり 」と呼ばれ 対局中に横から口を挟む 第三者の首を切って 引っくり返した盤に首を置き 四角いへこみに血を溜めた といういい伝えがある。
盤の脚は クチナシの実に見立て 第三者からの助言を「 口無し 」として
象徴している。
江戸時代の お城碁(将軍の前での対局)での いい伝えがある。
本因坊二世算悦と 安井家二世算知との対局。
将軍は まだ出座しなく 老中や数人の役人が見守る中での対局に
算知の後援者である 会津55万石の大名 保科正之が観戦のためにやってきた。(時期からも保科正之かは不明)
しばらく観戦していたが 白の薄みをついて 黒の算知が打ち込みを打った時に
「 いい手だ。 本因坊でも勝つ手はないだろう。 」とつぶやく。
これを聞いた算悦が 盤から離れ
「 この碁はもはやこれまでです。 勝負に関係なく打つことができません。 」と 自ら退出を願い出たという。
碁を打って お上にお仕えする碁打ちで 碁に関しては だれからも制約されず
だれからも口をはさまれるのは 許されないというものだった。
このごたごたを まわりの役人がとりなし 打ち継がれたという。
結果は 算悦の一目勝ち だったという。
(物語り囲碁英傑伝 田村竜騎兵著より抜粋)
アマ同士の碁でも 碁を知っているがために ついつぶやいてしまうことがある。
現代でも 通用するマナーの 基本だ。