東京での所用の後に 市ヶ谷の 日本棋院指導対局室へよった。

日曜日だったので 対局室は満席状態だった。

 

そんな中で 髪をふり乱した若い棋士が 

目の前まで碁盤に顔を近づけ 手順をヨム姿が 目にとまった。  

5子局の 指導碁だった。

中盤さなかの盤面は 見たことないくらいの 

ねじり合いの 碁だった。

白石が 強烈な攻めに合い 黒も白も眼がない 

大石のセメアイになっている。

白は コウに勝てないと セメアイが成立しない。

しかも 白が劣勢の コウ。

この碁席に すさまじいまでも 緊張の空間を感じた。

一手間違えれば 終わる。

私なら 投了してしまうような 碁。

おいつめられていることを 棋士の表情が 物語っていた。

新幹線の時間があったので 途中まで観戦して 帰路についた。

慎重に 打ち継いでいかなければならない 碁。

見ていた 30手程の攻防は 両者とも 苦しいものだっただろう。

石が入り 見えなかった石運びが 見えてくる。

新しい石の力関係や 石の役目を 感じることができた。

 

若手棋士は 

「ゾーンプレス理論」で知られ 本因坊タイトル者にもなった

王 銘琬九段だった。 

それから 30数年後 

全国大会に三年連続の 県職員代表として

日本棋院で対局をする機会を 得ることができたのは

私にとって幸運だった。