総武線に乗り、千葉県の手前、東京の下町へ。
入ったとたん、想像どおりの院の飾り気のない雰囲気に、まず安堵する。
今時のサロン風の院とは趣を異にする、レトロで質素な木造。
皆さんきびきびと立ち働いていた。
「指はね、こわいんだよ。きちんと動くようにするからね」
開口一番、院長の言葉に救われる。
最初に、痛みを広げないよう丁寧な触診と、可動域検査。
患部のさわり方からしてちがう。
レントゲンを見ての診断。
(午前の整形のレントゲン写真は、頭に来て借りなかったため、こちらの院であらかじめ紹介状を書いてもらった病院にて撮り直しておいた)
やはり亀裂骨折ぢゃなかった。
骨膜がかろうじて少し残され、そこに骨片が関節脇からぶる下がっていた。
「この骨片が離れちゃったら、手術もあるからね。きちんと整復して、固定しましょう」
背後からは空手の先輩に抑えられ、正面にいる院長が、私の指を引っ張る。
「うぐぐっ」
声を上げないつもりだったが、痛みで短くうめく。
院長が小声で話す。
「これで遠慮してこっちが力抜いたら、骨、もとにもどんないからね」
空手の先輩にやり方を伝えているのか、それとも私にいい聞かせているのか。
どちらにしても、まな板の鯉である。
計3度ほど、「うぐぐっ」と洩れた。
だが、痛いのに、どこか安心していた。
おかしな方向にずれた関節やら、ちぎれそうな骨片やらが、ちゃあんともとの鞘に収まっていく。
そんな期待感が、引っ張られたり動かされたりするたび、募っていったのである。
徒手整復。
触知の感覚をたぐりながら、身体にメスを入れず、回復へと導く。
骨つぎは日本の伝統医療である。
医の職人の妙技に出会えたと思った。
つづく