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立憲的意味の憲法

 実質的意味の憲法の第二は、自由主義に基づいて定められた国家の基礎法である。これは、一般に「立憲的意味の憲法」あるいは「近代的意味の憲法」と言われる。18世紀末の近代市民革命期に主張された、専断的な権力を制限して広く国民の権利を保障するという立憲主義の思想に基づく憲法である。その趣旨は、「権利の保障が確保されず、権力の分立が定められていない社会は、すべて憲法をもつものではない」と規定する有名な1789年フランス人権宣言16条に示されている。この意味の憲法は、固有の意味の憲法とは異なり、歴史的な観念であり、その最も重要なねらいは、政治権力の組織化というよりも人権保障にある。

 以上の三つの憲法の観念のうち、憲法の最もすぐれた特徴は、その立憲的意味にあると考えるべきである。したがって、憲法学の対象とする憲法とは、近代にいたって一定の政治的理念に基づいて制定された憲法であり、国家権力を制限して国民の自由を守ることを目的とする憲法である。そのような立憲的意味の憲法の特色を次に要説する。


立憲的憲法の特色

 立憲的意味の憲法の淵源は、思想史的には、中世にさかのぼる。中世においては、国王が絶対的な権力を保持して臣民を支配したが、国王といえども従わなければならない高次の法(higher law)があると考えられ、根本法(fundamental law)とも呼ばれた。この根本法の観念が近代立憲主義へとひきつがれるのである。

 もっとも中世の根本法は、貴族の特権の擁護を内容とする封建的性格の強いものであり、それが広く国民の権利・自由の保障とそのための統治の基本原則を内容とする近代的な憲法へ発展するためには、ロック(J.Locke)やルソー(J.J.Rousseau)などの説いた近代自然法ないし自然権(natural right)の思想によって新たに基礎づけられる必要があった。この思想によれば、①人間は生まれながらにして自由かつ平等であり、生来の権利(自然権)をもっている。②その自然権を確実なものとするために社会契約(social contract)を結び、政府に権力の行使を委任する、そして、③政府が権力を恣意的に行使して人民の権利を不当に制限する場合には、人民は政府に抵抗する権利を有する。

 このような思想に支えられて、1776年から1789年にかけてのアメリカ諸州の憲法、1789年のアメリカ合衆国憲法、1789年のフランス人権宣言、1791年のフランス憲法などが制定された。



立憲的憲法の形式と性質

 立憲的憲法は、その形式の面では成文法であり、その性質においては硬性(通常の法律よりも難しい手続によらなければ改正できないこと)であるのが普通であるが*、それはなぜであろうか。

 まず、立憲的憲法が成文の形式をとる理由としては、国家の根本的制度についての定めは文章化しておくべきであるという合理主義の思想を挙げることもできるが、最も重要なのは近代自然法学の説いた社会契約説である。それによれば、国家は自由な国民の社会契約によって組織され、その社会契約を具体化したものが根本契約たる憲法であるから、それは文書の形にすることが必要であり、望ましいとされたのである。

 また、立憲的憲法が硬性(rigid)であることの理由も、近代自然法学の主張した自然権および社会契約説の思想の大きな影響による。つまり、憲法は社会契約を具体化する根本契約であり、国民の不可侵の自然権を保障するものであるから、憲法によってつくられた権力である立法権は根本法たる憲法を改正する資格をもつことはできず(それは国民のみに許される)、立法権は憲法に拘束されると考えられたのである。

*軟性憲法 イギリスには憲法典が存在せず、種々の歴史的な理由から、実質的意味の憲法は法律で定められているので、単純多数決で改正することができる。これを軟性(flexible)憲法という。しかし実際には、実質的意味の憲法は容易には改正されない。