外は激しい雨が窓を叩いている。
グレーの雲に覆われた平日の午後は、まるですべての時間を二人だけのものにするために、世界を閉じ込めてしまったかのようだった。
リビングのソファで、juinはノートパソコンに向かって静かに作業をしていた。
その背後から、Sophieは足音を立てずに近づく。
普段の彼女なら、「ねえねえ、juin!」と無邪気に飛びつくだくろう。でも、今日の彼女の瞳には、いつもと違う熱が灯っていた。
彼女は26歳。普段は明るくポジティブで、周囲を照らす太陽のようなENFPの彼女だが、心の中に秘めた直感と好奇心は、時に誰も予想できないほど大胆な欲望へと変わる。
「……ねえ、juin」
ふわりと甘い香りが、juinの首元をかすめた。驚いて振り向く前に、Sophieの細い腕が後ろから彼の首に回される。彼女の体温が、いつもより熱を帯びていることに気づいて、juinの指がキーボードの上で止まった。
「まだ、そのお仕事終わらないの?」
耳元で囁かれた声は、いつものトーンよりも少し低くて、かすかに掠れている。
juinが「あと少しで――」と言いかけるのを遮るように、Sophieは彼の肩に顎を乗せ、回り込んだ手でそっとパソコンの画面をパタンと閉じてしまった。
「あ……」
「ダメ。今は、私だけを見て」
驚くjuinの視線の先で、Sophieはいたずらっぽく、でもどこか挑発的な笑みを浮かべている。
彼女が着ているのは、少しオーバーサイズの薄手のシャツ。鎖骨のラインが大胆に覗き、雨の日の薄暗がりのなかで、その肌がやけに白く、艶っぽく映った。
いつもならじれったい駆け引きを楽しむ彼女が、今日は真っ直ぐに、欲望を隠そうともしない。
「外、すごい雨だよ? こんな日は……何もしないで、お互いのことだけで頭をいっぱいにしちゃうのが一番正しい過ごし方だと思わない?」
Sophieはjuinの膝の上に、するりと跨るようにして座り込んだ。
密着する互いの体温。彼女の長い髪がjuinの頬を撫で、じっと見つめてくる瞳は、期待と、少しの危うさを孕んで潤んでいる。
「Sophie……?」
いつもと違う、どこか強引で情熱的な彼女の雰囲気に、juinの心拍数が跳ね上がる。
その動揺を敏感に察知したSophieは、満足げに目を細めると、彼の頬に、そしてリップラインに、指先で優しく触れた。
「待って、って言われても、今日は待たないよ。……juinだって、本当は同じこと考えてたんでしょ?」
そう言うと、彼女はjuinの返事を待たずに、深く、甘いキスで彼の唇を塞いだ。いつもより少し強引で、でもひたすらに甘美な、二人のプライベートな時間が、雨の音に溶けていく――。
「ん……っ……」
深いキスの後、Sophieはほんの数センチだけ唇を離した。銀色の糸を引いた。
息を弾ませるjuinの、少し動揺した視線が自分に向けられているのを見て、彼女の胸の奥がキュンと跳ねる。
(あ、juin、困ってる……可愛い)
普段の冷静な彼を、自分の手でかき乱しているという事実が、Sophieの好奇心と独占欲をさらに刺激した。
彼女はいつもより少し強引な自分の行動に、心底ワクワクしていた。
「ねえ、juin。心臓、すごく速くなってるよ?」
Sophieはいたずらっぽい笑みを浮かべながら、juinの胸元にそっと手のひらを当てた。薄いシャツ越しに伝わる彼の鼓動が、自分の手のひらにもトクトクと響く。
彼女はわざと、その指先を滑らせてシャツのボタンを一つ、また一つとゆっくり外していった。
「Sophie、ちょっと……まだ昼間だよ?」
困ったように眉をひそめるjuinの声。でも、その声がいつもより低く、熱を帯びているのをSophieは見逃さない。
「お昼間だからダメなの? 誰も見てないよ? それとも……私じゃ不満?」
わざと上目遣いで、少し拗ねたような、でも確信犯的な視線をぶつける。
天真爛漫な彼女が魅せる、計算された、けれど本気の誘惑。juinが息を呑むのがわかった。
Sophieはjuinの耳元に顔を寄せると、ふう、と熱い息を吹きかけ、そこから首筋へと柔らかく唇を這わせた。juinの身体がびくりと強張る。彼の指が、Sophieの細い腰をきつく掴んだ。その強い力に、彼女のなかで期待と欲望が一気に跳ね上がる。
「……ねえ、もっと私に困らされてよ。juin」
Sophieはjuinの髪に指を絡め、今度は逃がさないように、さらに深く、熱く、お互いの唾液が交わるほどの濃密なキスを交わした。二人の舌が絡み合う。
もう引き返せない。juinを翻弄していたはずのSophie自身もまた、彼の熱に、そして自らが火をつけた欲望の渦に、深く深く溺れていくのを感じていた。
ガラス窓の外は一面の銀世界ならぬ、激しい雨のカーテン。
いつもなら退屈に思えるこんな静かな午後も、今のSophieにとっては、juinを完全に独占するための最高の舞台(チャンス)でしかなかった。
「ねえ、もう逃げられないよ?」
Sophieはjuinの膝の上で完全に腰を落ち着け、彼の逃げ道を塞ぐように、その華奢な体をごつごつとした彼の胸にこれでもかと押し付けた。
ふわりと立ち上る、彼女のお気に入りの甘く艶やかな香水の香り。
それが二人の間の狭い空間に、そしてjuinの肺の奥深くにまで、容赦なく染み込んでいく。肌が直接触れ合うような距離での密着攻撃に、juinの理性がみしりと音を立てて軋むのがわかった。
「Sophie……本気なんだね」
諦めたような、でも熱い欲望を堪えるようなjuinの掠れた声。
「あったりまえじゃん」
Sophieは嬉しそうに目を細めると、彼の首筋に何度も、小さな、でも痕が残るほど深いキスを刻んでいく。
juinの手が、彼女の薄いシャツの裾から滑り込み、滑らかな曲線の背中をなぞった。その愛撫の快感に、Sophieの背中に甘い電流が走る。
困らせて、翻弄して、彼の焦る顔を特等席で楽しむはずだった。
なのに、juinの大きな手が自分の肌に触れ、彼の熱い吐息が肌を打つたびに、Sophie自身の頭の芯もジリジリと焼けつくように熱くなっていく。
(……あ、ヤバい。私のほうが、おかしくなりそう)
エスカレートしていくのは、彼女の行動だけではない。胸の奥から湧き上がる、もっと彼と一つになりたいという、焦れるような淫靡な欲望。太腿の間に籠る熱。
「juin……、juin……っ」
もう、いたずらっぽい笑みを浮かべる余裕なんて、Sophieには残っていなかった。
潤んだ瞳で彼の名前を何度も刻むように呼びながら、彼女はjuinのシャツを引きちぎらんばかりの勢いで剥ぎ取っていく。
互いの香りと体温が混ざり合い、二人の身体の境界線が溶けていく。
