― 忘れられない色はありますか ―


手に取った本のなかに、こんな文がありました。

そのとき、私のなかに浮かびあがった色は二つ。


ある日ふと、全身に、指先までに染みこんできた秋晴れの空色と

もうひとつは、ヴィジェ・ル・ブランという女性画家の、自画像のなかに描かれた赤色です。


この赤を前にしたとき、私はしばらくそこを離れることができませんでした。

色に呼吸があることを、そのとき初めて知ったのです。


こんなにも色に溢れている毎日なのに、強烈に私のなかに息づいている色はわずかです。


あとどれくらい、そんな色に出会えるだろうか


そう思うと、今日ある色、見慣れたはずの色たちもすこし、いつもとちがうふうに語りかけてきます。


ドイツは、花の色がとてもきれいでした。






(2013年2月)