荒川 弘「鋼の錬金術師」(14) | マンガ坂

荒川 弘「鋼の錬金術師」(14)

荒川 弘
鋼の錬金術師(14) 初回限定特装版

「等価交換」とされるこの世界の錬金術だが、実の所全く持って等価交換としての法則が成り立っていない事は、以前から諸所で指摘されてきた。
その中でも最も多いのは、「ある一定の質量のものを、同一の質量の別の物体に変化させるのだから、その変化自体に何らかのエネルギーが必要なはず」という指摘であると思うが、今巻でその矛盾に対する答の一片が示されたようだ。


「お父様」の動作一つで、「真理」の一片に到達したはずのエドとアルの錬金術は使えなくなってしまった。
しかし、系統の異なる「錬丹術」を操るメイ・チャンと、その流れを汲む術を操る「傷の男」は、その中でも術を自在に扱った。
錬金術には、隠された重要な要素があり、「お父様」は「それ」を無効化する術を知っている。そしてまた、錬丹術には「それ」を補う「何か」が存在する。
その「何か」こそが、今後エド達が「お父様」を打倒するための血路を開く要素である事は、まず間違いないだろう。
(雑誌連載分では更に興味深い事実も語られているのだが、それについては次回単行本発売時にでも)


話は変わって。
「強欲」を自ら受け入れたリン・ヤオ。あまりにも強大な賢者の石のエネルギーの前に、さしもの彼も屈してしまったか……と思われたが、全くそんな事はなく、グリードの中から虎視眈々と体を取り戻す事を狙っていた。
その事実を知っても、どこか楽しそうな態度を見せるブラッドレイの存在。そして「以前のグリード」が最終的に「お父様」から離反していたという事実。その二つの事柄に、雌伏して時を待つリンの存在を加えれば、あまりにも強大な「敵」を打倒するもう一つの血路が見えてくるのではないか、と考えるのは少々先走りすぎだろうか?


さて、今更の話だが、エルリック兄弟の父親は「ホーエンハイム」だ。
錬金術の歴史に詳しい方ならば思わずニヤリとしてしまうこの名前は、実在の錬金術師パラケルススの本名に由来している。
パラケルススといえば、賢者の石の所持者であるとか、ホムンクルスを創りだしただとか、神秘的な逸話に事欠かない人物だが、果たして作者がそこまでの寓意を込めて名付けたのか、それとも高名な錬金術師だからというだけの理由なのか、それはまだ不明である。


対して、今回遂にホーエンハイムとは別人である事が判明した「お父様」だが、その名はまだ明かされていない。私としては、パラケルススに匹敵する錬金術師となると、某「時間旅行者」の異名を持つ伯爵様ではないかと愚考するのだが……(ここいらの妄想については、雑誌連載時の拙感想をご参照ください)。
現時点ではそれら考察も愚行以外の何物でもなく、即ち今後の展開を楽しみに追っていく訳である。