高屋 奈月「フルーツバスケット」(20) | マンガ坂

高屋 奈月「フルーツバスケット」(20)

高屋 奈月
フルーツバスケット 20 (20)

どんなシリアスな展開が続いても、一巻に一話位はほのぼのするエピソードが挿入されてきた本作だが、今巻はほぼ全編シリアス展開が続き、物語自体がクライマックスを迎えた事を感じさせる。

さて、色々と思わせぶりに謎が散りばめられて来た本作だが、今回はその中でも大きな2つの謎が半ば解明された。


1つは、慊人が異常なまでに十二支の「絆」に拘る理由。
そしてもう一つは、透の母今日子と夾とのつながりについて。


母に疎まれようとも、父から無償の愛を得ていると信じていた幼い慊人。だが、その父の愛すらも、その本質は母へ向けられた物だと知った時から、慊人の異常なまでの十二支の「絆」への執着が始まった。
父親から繰り返し聞かされた「お前は特別な子なんだ」という言葉。父の愛が自分へ向けられていた物ではない事を知った後も、慊人はそれを認めようとはせず、父のその言葉こそが「父の愛が自分へ向けられていた」という揺るぎ無い証拠であると信じようとした。
慊人は、「十二支の呪い」だけでなく、自らを父の遺した言葉で呪縛し、結果として彼女は十二支の「絆」に頼らなければ自分を支えられない、弱い存在になってしまった。


母を「自分のせいで」失い途方にくれていた夾に、優しい言葉をかけてくれた本田今日子。由希への対抗意識から、その優しさからさえも逃げてしまった事は、夾の後悔の一つだった。
そして数年後、その優しさを自らの保身の為に永久に失ってしまった。
その出来事は、夾が人生に絶望するのに十分すぎるほど、残酷だった。


そんな夾を救ったのは、「自分のせいで」母親を失ってしまった透だった。
「いけない」と思いつつも、透の傍にいたいと願う夾。透の事が好きな自分を自覚しながらも、罪悪感からいずれ透の前から姿を消す事を決心し、「自分がいない世界での透の幸せ」を願った夾。
しかし、透の幸せが自分と共にある事だと知った夾の選んだ道は、「拒絶」だった。全ては、自分の母を、透の母を「殺してしまった」自分が許せないという罪悪感故に。
「罪悪感」それが、猫憑きの呪いとはまた別に、夾を呪縛しているのだ。


だが、今まで一番大切だった母よりも、夾の事を大切に思う自分を認めた透の覚悟も強い。楽羅の思いをも受け止め、ありったけの勇気で夾に思いを伝えた。

きっと、十二支の呪い同様、夾の心を縛る「呪い」をも解く事を、透は決心するに違いない。


透が、果たして夾の「拒絶」に対してどんな答えを導くのか。
そして、十二支の呪いも父の言葉も不確かである事を認めてしまった慊人は、これからどうなってしまうのか。刺されたクレノの安否は?


今までとは大分違った感情で、次巻が待ち遠しい。