ふと一年前は何してたかなぁ
なんて振り返っていた。

ただ普通に学生生活を送りながら
バイトをしていた。

子供用のおもちゃを売ってる、
おもちゃ屋で働いていた。

といっても置いている商品のチョイスが独特で
カプセルトイ(ガチャガチャとかの)
をそのまま段ボールにいっぱい入れて
一個10円で売っていたり、
これ放送当時販売してたやつやろ
みたいなおジャ魔女どれみのポチ袋みたいなのがあったり、
UNOの偽物みたいなカードゲームがあったりした。

基本的には、仮面ライダーシリーズも
プリキュアシリーズも
一個前くらいのやつを安く売ってるような店だった。
かと思えば、アンパンマンのグッズはちゃんと正規値段で売ってるような店だった。

小さいマスコットのUFOキャッチャーなんかも置いてあったけど
なんかの不具合かで“故障中“と張り紙をされて動かないのに店の真ん前に置かれていた。

普通に意味がわからない。

が、
その普通に意味がわからないところが良かった。
かなり良かった。

周りを見渡してみても、大体のお店が同じような商品を売って
同じような流行りのテイストの店内で
同じような店員が接客している。

悪くはないけど、
その店でまた同じような商品を買うことで
みんなが同じような雰囲気を見に纏っている
みたいな
簡単に言うと没個性量産万歳みたいな世界で
そのおもちゃ屋は異彩を放っていた。


最初に面接に行った時なんかも
店には閉店セールの張り紙がたくさんしてあった。


「…?え?」
これ帰らされるやつか?
とか思っていたら、店の奥から想像より随分と若い店長が出てきて
面接をした。

今のお店は閉まるけど新しくなって
そこで働けるので問題ないです、
とかなり問題ありそうなことを言われながら
まぁ続けられるならいっか。と
呑気な考えで結局そこで働くことになった。

後で知ったことだけど、
随分と若い店長はバイトの子で
同い年だった。

店長は店を辞めてしまったらしく、
店にはほぼ同世代のバイトしかいなかったから
なんとなく頑張る気ないですみたいな人が集まっていて、
本当にやる気のやの字もないくらいの労働をしていた。

でもそのおかげでみんな優しかったし
ほぼワンオペということもあり
かなり気楽だった。


というかほとんど座っていた。
勝手にレジ前にチーン!と鳴るベルを置いて
そのベルなってから

ちょっと中で作業してまして!みたいな急ぎ気味の芝居を打って
レジ接客するだけだった。
全然中でお菓子食べてただけなのに。


ちなみに言っておくと
やることがあるのに、サボって休憩していたわけではない。
本当にやることがなかった。
まじでなかった。

ほぼ番犬の役割。

実際万引きが絶えなかったから
もはや番犬の役割すらこなせてなかったけど。


道ゆくちびっ子ギャング達にもこの店はチョロいと見抜かれてしまい、
レジ前の商品までいかれていたらしい。
普通にイカつい。
わたしなら絶対バレないと分かっていてもさすがにレジ前の商品はいけない。



それからまもなくして
店はマジに潰れた。

当たり前っちゃ当たり前だった。


今思い返すとあれは夢だったんじゃないか、とすら思える。
不思議な空間だった。



しばらくした頃久しぶりにおもちゃ屋のあるところを通ったので、どれ。と
店を少し覗いてみた。


それはそれは
ちゃんとした仏壇屋になっていた。


あのおもちゃ達はちゃんと成仏できたらしい。



不思議な夢だったなぁ…。