約束の地シカゴ | Ran'sストレンジブリュー

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エルビスやチャック・ベリー以前はどーだったの?

シカゴを特徴づけているのはその地理的条件である。

ミシシッピ川はミシガン湖近くまで流れ込み、19世紀半ばに10年以上かけてイリノイ・ミシガン運河が開通すると都市化が進んだ。鉄道整備と相まって内陸交通、交易の要になっていく。五大湖工業地帯の一角を占めており20世紀初頭には高層ビルが立ち並ぶアメリカ第2の都市になった。

デトロイトにも言えることだが工業都市は移民や黒人の受け皿になった。サウスサイド地区にはチェコ移民のコミュニティーがあったらしく、ポーランド出身のチェス兄弟がシカゴにやってきたのも無縁ではないだろう。

 

もうひとつシカゴを語る上で忘れられないのが「アウトフィット」(シカゴ・ギャング)の存在だ。元々、ノースサイド、サウスサイドにはストリート・ギャングが存在していた。19世紀末にジェームス・コロシモがシカゴにやってきて勢力を広げた。組織にはジョニー・トーリオやアル・カポネが参入してきた。禁酒法時代には市長ウィリアム・トンプソンと癒着して莫大な利益を上げるようになった。その後はカポネ達のサウスサイド・ギャングとノースサイド・ギャングが抗争を繰り返すようになった。1920年代の禁酒法時代はジャズが北部に広がる時期でもあった。皮肉なことにギャングが経営するクラブやスピークイージーがジャズマンの活動の場になったのだ。こんな話がある。「カポネが経営する会員制クラブ、ゴールド・コーストがあった。深夜カポネが現れるとクラブは貸し切りになる。表は屈強なボディーガードが固めている。カポネのお気に入りはアール・ハインズ楽団だ。演奏が始まり上機嫌になったカポネはバンドスタンドに上がるとミュージシャンのポケットに100ドル札をねじ込んで回った。それを一晩中繰り返していた。」