№1
「やっと別れられた訳だ」
「嵩、面白がってない?」
前園嵩はニヤニヤしながら、眉間にしわを寄せている彼女を見た。
「喜んでやってんだぞ、しょうもない男と別れられなかったのはお前だろう?」
医療器具メーカーの営業マンである彼には、田村郁美と言う彼女がいる。郁美の双子の兄である田村洋樹とは中学時代からの友人である。
「郁美のやつ来たぞ・・・」
ストレートの髪を肩まで伸ばした彼女は、アパレル関係の会社に勤めているデザイナーである。特別美人と言うわけではないが、彼女が笑うとえくぼができ大概の男どもは見とれてしまう。
「二人とも早いのね」郁美は少し大きめの唇を歪めた。
「何が早いだ?兄妹揃って遅いぞ」嵩は横の椅子を彼女の為に引いた。
いつも冗談ばかり言って笑わせる嵩だが、リーダー的存在で、いざと言う時は誰よりも頼りになる男だった。背が高いだけでなく目鼻立ちが整っているせいで人目を引く。
「絹代、別れたんだって?」郁美は嵩の横に座ると絹代を見た。
絹代は首を竦めた。嵩から散々別れろと言われ続けていた絹代も、ようやく見切りをつけて男と別れた。
「今日は絹代の復活祭だ。彼女のおごりだってさ」
「何よ、調子いいことを・・・。普通逆でしょ!」絹代は嵩の背中をバシッと叩いた。
「いてえな~。本気で叩くこたーねえだろうよ」
「嵩ったら・・・」郁美はクククっと笑った。「絹代に勝とうたって無理な話でしょう」
三人が騒いでいると息を切らせて洋樹が店に入ってきた。
「来たわよ。悪ガキのヒロッキーが・・・」絹代は顎を少し突き出して、三人に気がついた洋樹に視線を向ける。
絹代はこの三人と違って目立たない地味な性格だ。顔も平凡でお世辞にも美人とはいえない。中学時代から生徒会で活躍する三人の仲間になれたことを今でも不思議に思っていた。
「よ!元気か?」洋樹は白い歯を見せて笑うと絹代の隣に座った。
洋樹は好青年である。銀縁メガネがトレードマークで頭が良くて、スポーツは何でもこなせ、ルックスもなかなかのものである。いつもと変わらない洋樹の笑顔に絹代はいつも元気づけられるのだ。いつでも自分の味方でいてくれる彼が好きだ。
「当たり前でしょう?この私がそう簡単にめげると思う?」
久しぶりに四人は揃った。社会人になって、それぞれ自分の目標に向かって歩き始めてからというもの、この四人が揃うことは珍しい。
絹代以外は早くから将来のことを考え、目標を持って努力を惜しまなかった。そんな彼らが羨ましかった。
嵩は真面目な表情を浮かべて洋樹を見た。
「絹代が彼と別れたそうだ」
「別れて良かったと思うよ。絹代には悪いけど、最初からあの男のことが信用できなかった」銀縁メガネの向こうから、思いやりに満ちた瞳が絹代を見返す。
頭が良くって何でも上手くやりこなす。バイクを乗り回し、他校の生徒と喧嘩したり・・・。洋樹は空手を習っていたせいか、喧嘩しても負け知らずの面を持つ一方で、学校では優等生として先生たちの信頼を受けていた。生徒からも一目を置かれる存在として、嵩や郁美と共に生徒会で活躍した。
絹代はいつも三人を羨望の眼差しを向けるのが常だった。
彼らのようにはなれないと絹代自身が一番わかっていた。絹代にとって彼らは憧れであり、何よりも大切な友達だった。これから先も変わらず大切な親友でありたいと絹代は願っている。
「嵩、面白がってない?」
前園嵩はニヤニヤしながら、眉間にしわを寄せている彼女を見た。
「喜んでやってんだぞ、しょうもない男と別れられなかったのはお前だろう?」
医療器具メーカーの営業マンである彼には、田村郁美と言う彼女がいる。郁美の双子の兄である田村洋樹とは中学時代からの友人である。
「郁美のやつ来たぞ・・・」
ストレートの髪を肩まで伸ばした彼女は、アパレル関係の会社に勤めているデザイナーである。特別美人と言うわけではないが、彼女が笑うとえくぼができ大概の男どもは見とれてしまう。
「二人とも早いのね」郁美は少し大きめの唇を歪めた。
「何が早いだ?兄妹揃って遅いぞ」嵩は横の椅子を彼女の為に引いた。
いつも冗談ばかり言って笑わせる嵩だが、リーダー的存在で、いざと言う時は誰よりも頼りになる男だった。背が高いだけでなく目鼻立ちが整っているせいで人目を引く。
「絹代、別れたんだって?」郁美は嵩の横に座ると絹代を見た。
絹代は首を竦めた。嵩から散々別れろと言われ続けていた絹代も、ようやく見切りをつけて男と別れた。
「今日は絹代の復活祭だ。彼女のおごりだってさ」
「何よ、調子いいことを・・・。普通逆でしょ!」絹代は嵩の背中をバシッと叩いた。
「いてえな~。本気で叩くこたーねえだろうよ」
「嵩ったら・・・」郁美はクククっと笑った。「絹代に勝とうたって無理な話でしょう」
三人が騒いでいると息を切らせて洋樹が店に入ってきた。
「来たわよ。悪ガキのヒロッキーが・・・」絹代は顎を少し突き出して、三人に気がついた洋樹に視線を向ける。
絹代はこの三人と違って目立たない地味な性格だ。顔も平凡でお世辞にも美人とはいえない。中学時代から生徒会で活躍する三人の仲間になれたことを今でも不思議に思っていた。
「よ!元気か?」洋樹は白い歯を見せて笑うと絹代の隣に座った。
洋樹は好青年である。銀縁メガネがトレードマークで頭が良くて、スポーツは何でもこなせ、ルックスもなかなかのものである。いつもと変わらない洋樹の笑顔に絹代はいつも元気づけられるのだ。いつでも自分の味方でいてくれる彼が好きだ。
「当たり前でしょう?この私がそう簡単にめげると思う?」
久しぶりに四人は揃った。社会人になって、それぞれ自分の目標に向かって歩き始めてからというもの、この四人が揃うことは珍しい。
絹代以外は早くから将来のことを考え、目標を持って努力を惜しまなかった。そんな彼らが羨ましかった。
嵩は真面目な表情を浮かべて洋樹を見た。
「絹代が彼と別れたそうだ」
「別れて良かったと思うよ。絹代には悪いけど、最初からあの男のことが信用できなかった」銀縁メガネの向こうから、思いやりに満ちた瞳が絹代を見返す。
頭が良くって何でも上手くやりこなす。バイクを乗り回し、他校の生徒と喧嘩したり・・・。洋樹は空手を習っていたせいか、喧嘩しても負け知らずの面を持つ一方で、学校では優等生として先生たちの信頼を受けていた。生徒からも一目を置かれる存在として、嵩や郁美と共に生徒会で活躍した。
絹代はいつも三人を羨望の眼差しを向けるのが常だった。
彼らのようにはなれないと絹代自身が一番わかっていた。絹代にとって彼らは憧れであり、何よりも大切な友達だった。これから先も変わらず大切な親友でありたいと絹代は願っている。
