梅雨とあってはっきりしない天気が続いている。三人は朝食を済ませてゆっくりとコーヒーを味わっていた。テレビをつけて楽な姿勢でくつろいでいると、玄関のベルが鳴りドアが開く音がする。
千春が玄関に向かうと、そこには白いティシャツにジーンズと言うラフな格好をした相場が立っていた。
「千夏さんはいるかい?」
「ええ・・・」千春は紅影でのことが頭にちらりと浮かんだ。
「ちょっと失礼するよ・・・」
相場はいつものように、まるで自分の家に戻ってきたと言うよう気楽さで、靴を脱いで居間へと向かった。千春は瞬きすると慌てて相場の後について居間へ向かう。
「おはよう」
千夏は危うくコーヒーカップを落とすところだった。
「よう!千秋ちゃんもいたか。三人ともお揃いで・・・」
「おはようございます」千秋はもごもごと言った。
いつもならもっと気楽におはようと、相場に向かって挨拶を返すところだが、千秋にはどこかためらいがあるようで歯切れが悪い。
「コーヒーを入れてくるわね」千夏はそそくさと台所に消えた。
「今日、お店は?」千秋はちらりと台所に目をやる。
千夏はコーヒーをトレーに載せて戻ってくる。「どうぞ・・・」相場にコーヒーを勧める。
「今日、何か予定あるかい?」
「え?」
「ドライブにでも行かないか?」
千春と千秋は顔を見合わせてから千夏を見る。千夏は戸惑ったように相場を見返す。
「最近忙しくて、君とゆっくり話すこともできなかったな・・・」相場はちょっと照れたように千秋と千春を見る。
再び千春と千秋は顔を見合わせる。二人はしばらくわけがわからないと言う顔をしていた。
「はぁ?」千春はほのかに赤みの差した千夏の頬をまじまじと見る。まじ?もしかして二人って・・・。
千春が玄関に向かうと、そこには白いティシャツにジーンズと言うラフな格好をした相場が立っていた。
「千夏さんはいるかい?」
「ええ・・・」千春は紅影でのことが頭にちらりと浮かんだ。
「ちょっと失礼するよ・・・」
相場はいつものように、まるで自分の家に戻ってきたと言うよう気楽さで、靴を脱いで居間へと向かった。千春は瞬きすると慌てて相場の後について居間へ向かう。
「おはよう」
千夏は危うくコーヒーカップを落とすところだった。
「よう!千秋ちゃんもいたか。三人ともお揃いで・・・」
「おはようございます」千秋はもごもごと言った。
いつもならもっと気楽におはようと、相場に向かって挨拶を返すところだが、千秋にはどこかためらいがあるようで歯切れが悪い。
「コーヒーを入れてくるわね」千夏はそそくさと台所に消えた。
「今日、お店は?」千秋はちらりと台所に目をやる。
千夏はコーヒーをトレーに載せて戻ってくる。「どうぞ・・・」相場にコーヒーを勧める。
「今日、何か予定あるかい?」
「え?」
「ドライブにでも行かないか?」
千春と千秋は顔を見合わせてから千夏を見る。千夏は戸惑ったように相場を見返す。
「最近忙しくて、君とゆっくり話すこともできなかったな・・・」相場はちょっと照れたように千秋と千春を見る。
再び千春と千秋は顔を見合わせる。二人はしばらくわけがわからないと言う顔をしていた。
「はぁ?」千春はほのかに赤みの差した千夏の頬をまじまじと見る。まじ?もしかして二人って・・・。
事情を察した千春と千秋は、そそくさと千夏を追い立てて送り出した。二人は紅影での出来事を綺麗さっぱり忘れ去っていた。
二人が車に乗り込むと空が明るくなり陽が射して来た。
「あの二人、私が来たときは偉くよそよそしいと言うか、避けているような気がしたけれど・・・」
「気のせいじゃない?」
二人が自分と同じように、相場が他の女性といるところを見て不快だと感じていたなどと言えない。まるでやきもちを妬いていると思われるのはしゃくだ。
「まあ、いいけれどね」相場はにっこり笑った。
相場と千夏はドライブを楽しんだ。車窓から見える風景に時折り目を向けながら、二人はラジオから流れる音楽を聞いていた。
晴れ渡っていた空も、灰色の雲が広がり始めた。梅雨独特の気まぐれな空は、やがて小雨の降る不安定な様相を見せ始めた。
「いい天気だったのにな・・・。何処かで何か食べよう」
「そうね、私もお腹が空いたわ・・・」
二人が食事を終えて店を出る頃になると、小雨も止んで灰色の雲の隙間から太陽の光が、シャワーのように大地に降り注いだ。車を走らせる間も、田植えを終えみずみずしい緑の広がる中、青空にどんよりした雲が混じり合い、コントラストな風情を醸し出して、様々な表情を見せていた。車はでこぼこした道に入った。
相場は車を止めて、田園風景に溶け込みそうな、老女らしき姿に目を向けた。
「祖母なんだ、体調を崩したと言っていたので、心配になって様子を見に来たんだ。ちょっと会って来るから、ここで待っていてくれ」
話しをしていた相場と老女は千夏の方を見た。手を翳して二人の方を見ていた千夏に、老女はちょこんと軽く頭を下げた。千夏もそれに応えて頭を軽く下げる。
相場は老女を一人残して車に戻って来た。
「おばあさんは大丈夫?」
「ああ・・・、顔色も良かったから、もう大丈夫だろう。動きが身軽で僕より敏捷だよ。何処にあんなエネルギーを貯め込んでいるんだろうな」相場は軽い笑い声を上げた。
相場の言葉には、祖母に対する尊敬と敬愛が込められていた。千夏の心に相場の祖母に対する温かな心情が滲み広がっていった。
相場は腰を曲げて畦道に立っている老女に大きく手を振った。千夏は相場の横に立ち、老女に向って会釈した。
車に乗り込むと、畦道に立ってこちらを見つめている老女を見た。車が走り始めると、老女はしゃんと腰を伸ばして手を振る。車が小さく見えなくなるまで手を振り続けていた。
でこぼこした道を走る、まるでタイムスリップしたような情景が前方に広がっている。車は静かな田園風景を背にして、往来の激しい街の中へと入って行った。やがてサンシャイン・ハウスが見える私道へと入る。
二人が車に乗り込むと空が明るくなり陽が射して来た。
「あの二人、私が来たときは偉くよそよそしいと言うか、避けているような気がしたけれど・・・」
「気のせいじゃない?」
二人が自分と同じように、相場が他の女性といるところを見て不快だと感じていたなどと言えない。まるでやきもちを妬いていると思われるのはしゃくだ。
「まあ、いいけれどね」相場はにっこり笑った。
相場と千夏はドライブを楽しんだ。車窓から見える風景に時折り目を向けながら、二人はラジオから流れる音楽を聞いていた。
晴れ渡っていた空も、灰色の雲が広がり始めた。梅雨独特の気まぐれな空は、やがて小雨の降る不安定な様相を見せ始めた。
「いい天気だったのにな・・・。何処かで何か食べよう」
「そうね、私もお腹が空いたわ・・・」
二人が食事を終えて店を出る頃になると、小雨も止んで灰色の雲の隙間から太陽の光が、シャワーのように大地に降り注いだ。車を走らせる間も、田植えを終えみずみずしい緑の広がる中、青空にどんよりした雲が混じり合い、コントラストな風情を醸し出して、様々な表情を見せていた。車はでこぼこした道に入った。
相場は車を止めて、田園風景に溶け込みそうな、老女らしき姿に目を向けた。
「祖母なんだ、体調を崩したと言っていたので、心配になって様子を見に来たんだ。ちょっと会って来るから、ここで待っていてくれ」
相場は千夏を車に残して車を出ると、一人ぽつんと立ってこちらを見ている老女に向って歩き出す。
千夏は車から出ると、新鮮な空気を吸い込んだ。生温かい風が吹き、山の頂きから雨を呼ぶ雨曇が流れ広がっていく。話しをしていた相場と老女は千夏の方を見た。手を翳して二人の方を見ていた千夏に、老女はちょこんと軽く頭を下げた。千夏もそれに応えて頭を軽く下げる。
相場は老女を一人残して車に戻って来た。
「おばあさんは大丈夫?」
「ああ・・・、顔色も良かったから、もう大丈夫だろう。動きが身軽で僕より敏捷だよ。何処にあんなエネルギーを貯め込んでいるんだろうな」相場は軽い笑い声を上げた。
相場の言葉には、祖母に対する尊敬と敬愛が込められていた。千夏の心に相場の祖母に対する温かな心情が滲み広がっていった。
相場は腰を曲げて畦道に立っている老女に大きく手を振った。千夏は相場の横に立ち、老女に向って会釈した。
車に乗り込むと、畦道に立ってこちらを見つめている老女を見た。車が走り始めると、老女はしゃんと腰を伸ばして手を振る。車が小さく見えなくなるまで手を振り続けていた。
でこぼこした道を走る、まるでタイムスリップしたような情景が前方に広がっている。車は静かな田園風景を背にして、往来の激しい街の中へと入って行った。やがてサンシャイン・ハウスが見える私道へと入る。
「今日は付き合わせて悪かったな・・・」
相場は駐車場に止められている正次の車に目を留めた。彼女を彼に会わせたくない、このまま何処かへ連れ去りたいと考えた。千夏も正次の車を見て、呪文が解けるのだと思うと、正次の事が恨めしく思うのだった。
「ありがとう・・・楽しかったわ。ご馳走様でした」
「デートのつもりでドライブに誘ったんだが、君には迷惑だったかなと・・・」
「そんな事はないわ・・・。素適なデートだったわ・・・」千夏は微笑んだ。「嬉しかったわ・・・とっても・・・」正次の車を見るまでは・・・と千夏は思う。
「良かった、じゃあ・・・今度の休みに誘ってもいいかな・・・」
相場は期待を込めて千夏を見つめた。千夏は笑みを浮かべ頷くと、ドアに手をかけた。
「千夏・・・」
千夏はゆっくりと振り向く。相場の熱い眼差しに胸がときめき、身体の奥底から疼くような感覚の渦に目眩を覚える。相場は千夏に腕を伸ばして引き寄せると、抱き竦めて激しく唇を奪った。千夏は相場の首に腕を回し、自分から進んでキスに応える。二人は全てを奪い合うように激しいキスを繰り返す。
二人は感情がおさまっても、そのままじっとお互いを抱きしめ合っていた。その時、妹達がサンシャインハウスの二階から、二人の熱い抱擁を目撃していていようとは思ってもいなかった。
相場は駐車場に止められている正次の車に目を留めた。彼女を彼に会わせたくない、このまま何処かへ連れ去りたいと考えた。千夏も正次の車を見て、呪文が解けるのだと思うと、正次の事が恨めしく思うのだった。
「ありがとう・・・楽しかったわ。ご馳走様でした」
「デートのつもりでドライブに誘ったんだが、君には迷惑だったかなと・・・」
「そんな事はないわ・・・。素適なデートだったわ・・・」千夏は微笑んだ。「嬉しかったわ・・・とっても・・・」正次の車を見るまでは・・・と千夏は思う。
「良かった、じゃあ・・・今度の休みに誘ってもいいかな・・・」
相場は期待を込めて千夏を見つめた。千夏は笑みを浮かべ頷くと、ドアに手をかけた。
「千夏・・・」
千夏はゆっくりと振り向く。相場の熱い眼差しに胸がときめき、身体の奥底から疼くような感覚の渦に目眩を覚える。相場は千夏に腕を伸ばして引き寄せると、抱き竦めて激しく唇を奪った。千夏は相場の首に腕を回し、自分から進んでキスに応える。二人は全てを奪い合うように激しいキスを繰り返す。
二人は感情がおさまっても、そのままじっとお互いを抱きしめ合っていた。その時、妹達がサンシャインハウスの二階から、二人の熱い抱擁を目撃していていようとは思ってもいなかった。
「彼女がいつ戻ってくるか聞いていないかい?一体何処へ行ったんだい?」
二人は愕然として窓の外を見ていた。千春は正次の声に我に返ると、千秋を引っ張って窓から離れた。千春はごくりと唾を飲み込んで、千秋のスカートの裾を引っ張った。
「も・・・もう・・・もうすぐ戻ってくると思いますけど・・・」千秋はもごもごと言った。
二人は愕然として窓の外を見ていた。千春は正次の声に我に返ると、千秋を引っ張って窓から離れた。千春はごくりと唾を飲み込んで、千秋のスカートの裾を引っ張った。
「も・・・もう・・・もうすぐ戻ってくると思いますけど・・・」千秋はもごもごと言った。
姉さん!どうすんのよ!二人は心の中で呟いた。
― おい!どうするんだ、お前達?! ―