千春と千秋が紅影に入ると、店のドアが開いて相場が姿を現す。
「あら、相場さんじゃない」千春は相場に笑顔を向ける。
「君たちも来てたのか・・・」相場の表情は硬かった。
千春が相場の視線を辿ると、そこにはカウンターに座っている友美の姿があった
「今から食事かい?」
「ええ、千秋と待ち合わせしてホテルかどこか、レストランへ行って食事しようと思ったんだけど・・・」
「でも、結局はよそへ行くより紅影でパスタでも食べようってことになったの」
千秋はカウンターにいる園田を見て微笑んだ。園田はいつもの親しみのある笑顔で三人に向かって頷いた。
「相場さんは友美さんと待ち合わせ?」
「ああ、ちょっとな・・・」千秋の問いに相場は曖昧に答える。
カウンターに座っていた友美は、千春たちが店に入ってきたことにも気づいていない様子で、振り向きもせずにコーヒーカップに視線を落としている。
「相場さんと友美は話があるみたいね」
千春と千秋は顔を見合わせて頷くとカウンターにはいかず、少し離れたテーブルに近づき椅子に腰掛けた。相場は友美のいるカウンターへ向かった。
「待たせたね・・・」
「いいえ・・・」友美はコーヒーカップを手にして答えた。
友美がコーヒーを口にする横顔を相場は見つめた。ゆっくりとカウンターの椅子に座り、園田にコーヒーを注文する。園田は相場に頷いて、棚にあるブレンドコーヒーの入った缶に手を伸ばす。三人の間にはちょっとした緊張感が漂っていた。
「あら、相場さんじゃない」千春は相場に笑顔を向ける。
「君たちも来てたのか・・・」相場の表情は硬かった。
千春が相場の視線を辿ると、そこにはカウンターに座っている友美の姿があった
「今から食事かい?」
「ええ、千秋と待ち合わせしてホテルかどこか、レストランへ行って食事しようと思ったんだけど・・・」
「でも、結局はよそへ行くより紅影でパスタでも食べようってことになったの」
千秋はカウンターにいる園田を見て微笑んだ。園田はいつもの親しみのある笑顔で三人に向かって頷いた。
「相場さんは友美さんと待ち合わせ?」
「ああ、ちょっとな・・・」千秋の問いに相場は曖昧に答える。
カウンターに座っていた友美は、千春たちが店に入ってきたことにも気づいていない様子で、振り向きもせずにコーヒーカップに視線を落としている。
「相場さんと友美は話があるみたいね」
千春と千秋は顔を見合わせて頷くとカウンターにはいかず、少し離れたテーブルに近づき椅子に腰掛けた。相場は友美のいるカウンターへ向かった。
「待たせたね・・・」
「いいえ・・・」友美はコーヒーカップを手にして答えた。
友美がコーヒーを口にする横顔を相場は見つめた。ゆっくりとカウンターの椅子に座り、園田にコーヒーを注文する。園田は相場に頷いて、棚にあるブレンドコーヒーの入った缶に手を伸ばす。三人の間にはちょっとした緊張感が漂っていた。
千秋がカウンターにいる三人を見て言った。
「なんとなく変な雰囲気ね・・・」
「何が?」千春はカウンターの三人を見つめたまま答えた。
千春は千秋の言わんとしていることが理解できた。相場が入ってきた時から、友美も様子がおかしいと感じていた。
園田は千春たちのテーブルに近づき注文をとる。園田はいつもと変わらない笑顔を二人に向けるが、カウンターにいる二人に気を取られていた。
「カウンターの隅に座っているのはもしかして川久保さん?」千秋は目を細める。
「ほんと?珍しいわね」千春は瞬きしてカウンターの隅に視線を向けた。
友美と相場に気を取られていたせいで、千春たちはすぐに川久保の存在に気がつかなかった。川久保は照明の影で隠れて座っている。孤独な雰囲気が漂い、かえってその存在は人目を引く。
「川久保さんはあそこがいつものポジションだよ。たいてい閉店間際まであそこに座っている。いつも君たちとは入れ違いに彼が姿を見せるからね・・・」
カウンターへ戻っていく園田の背中を見つめて千春は言った。
「園田さんて大人よね。穏やかでいい人・・・。あんないい人と別れた奥さんの気がしれないわ・・・」
「よく言うじゃない、夫婦のことは夫婦にしかわからないことがあるって・・・」
「さようでございますわね。さすが!しっかり者の妹様の言う通りでございますわ・・・」千春はちゃかすように言った。
「嫌ね、千春ねえったら・・・」
「褒めてるのよ、これでも・・・」千春はにっと笑った。
「なんとなく変な雰囲気ね・・・」
「何が?」千春はカウンターの三人を見つめたまま答えた。
千春は千秋の言わんとしていることが理解できた。相場が入ってきた時から、友美も様子がおかしいと感じていた。
園田は千春たちのテーブルに近づき注文をとる。園田はいつもと変わらない笑顔を二人に向けるが、カウンターにいる二人に気を取られていた。
「カウンターの隅に座っているのはもしかして川久保さん?」千秋は目を細める。
「ほんと?珍しいわね」千春は瞬きしてカウンターの隅に視線を向けた。
友美と相場に気を取られていたせいで、千春たちはすぐに川久保の存在に気がつかなかった。川久保は照明の影で隠れて座っている。孤独な雰囲気が漂い、かえってその存在は人目を引く。
「川久保さんはあそこがいつものポジションだよ。たいてい閉店間際まであそこに座っている。いつも君たちとは入れ違いに彼が姿を見せるからね・・・」
カウンターへ戻っていく園田の背中を見つめて千春は言った。
「園田さんて大人よね。穏やかでいい人・・・。あんないい人と別れた奥さんの気がしれないわ・・・」
「よく言うじゃない、夫婦のことは夫婦にしかわからないことがあるって・・・」
「さようでございますわね。さすが!しっかり者の妹様の言う通りでございますわ・・・」千春はちゃかすように言った。
「嫌ね、千春ねえったら・・・」
「褒めてるのよ、これでも・・・」千春はにっと笑った。
園田は千春たちの注文した料理に取り掛かった。目の前にいる相場と友美は重苦しい沈黙の中にいた。その沈黙を相場が破った。
「私とは一緒になれないというのかい?」
「ええ・・・」友美はうつむいたまま頷いた。
「どうして・・・。二人でならきっとうまくいくよ・・・。お互いのことは良くわかっているし・・・。私は君を幸せにする自信がある」
「そういう問題じゃないでしょ・・・。共同経営者として、二人でこれからも一緒に店をやっていくことはできるけど・・・」
「結婚したら家庭に入れなんて、そんなナンセンスなことは言わないよ・・・」
「はぐらかさないで・・・」友美は顔を上げて相場を見つめた。
「はぐらかす?私は真剣だよ。私が嫌いというわけじゃないだろ?」
「そういう問題じゃないわ・・・」友美は深い溜息を吐いた。
「何が問題なんだ・・・」相場は苛立ったように言った。
「私・・・」友美は園田の方を見た。
何で園田さんを見るんだ。相場は苛立つ自分を抑えようとする。理屈ではわかっているつもりだが、友美を幸せにするとベッドに横たわる直也に約束したのだ。
「私には好きな人がいるの・・・」
相場はいきなり頭を殴られたような気がした。かっと目を見開き呆然とする。まさか・・・。
園田はパスタをソースに絡める手を止めて二人を見た。相場がプロポーズを断られる場面に、立ち会う羽目になるとは思ってもみなかったのである。
「一体誰なんだ?それになぜここでこんな話をしなきゃならないんだ」
「二人で話していても堂々巡りだからよ。誰かがそばにいてくれたら、貴方も落ち着いて冷静になって話せると・・・」
「その誰かが園田さんというわけ・・・」
「席をはずすよ。あの二人にパスタを持っていかないといけないし・・・」
「で、誰なんだ。その君の好きな人って言うのは・・・。お互いに同じ気持ちというわけか・・・」相場は園田を睨んだ。
園田は二人分のパスタの皿を手にしたまま動けなくなった。
「わからないわ・・・」友美は消え入りそうな声で言った。
「わからない?」
「私の気持ちには気づいてないわ・・・。私の片思いよ・・・。とてもいい人・・・。その人と居ると心が落ち着くの・・・」
園田はその場から逃げ出したかった。もちろん相場に同情もしていたが、友美が思う相手が誰なのか知りたいと思うと同時に聞きたくはなかった。友美の口から聞かされることが怖かったのだ。
「その男はまったく君の気持ちに気がついていないというのか?そんなやつのことが好きでも、どうにもならないじゃないか。君は幸せにならなきゃだめだ。私なら君を幸せにできる。直也にも約束した。君を守ると・・」
「貴方を愛してないわ・・・」
園田は友美から相場に目を向ける。相場に同情し、そして自分を哀れんだ。友美を思う気持ちは自分とて同じだ。相場が相手なら諦めもつく、友美と自分は年も離れ、彼女にはふさわしくないとわかっている。
「貴方は直也さんの親友よ。私はその人の妻というだけよ。千春と私は親友で、貴方は千春と同じ親友の妹として守ろうとしているだけよ。親友の妹たちを守るのが義務だと思い込んでるだけ・・・」
「友美さんそれは違うよ・・・」園田は相場を弁護するように言った。
「私、気がついたの・・・。相場さんが大切な人だからこそ、相場さんの優しさに甘えて逃げ込むのは卑怯だって・・・。相場さんは私を幸せにしてくれるって疑ってもいない。でも、大切なのは自分の正直な気持ちだって・・・」
「私とは一緒になれないというのかい?」
「ええ・・・」友美はうつむいたまま頷いた。
「どうして・・・。二人でならきっとうまくいくよ・・・。お互いのことは良くわかっているし・・・。私は君を幸せにする自信がある」
「そういう問題じゃないでしょ・・・。共同経営者として、二人でこれからも一緒に店をやっていくことはできるけど・・・」
「結婚したら家庭に入れなんて、そんなナンセンスなことは言わないよ・・・」
「はぐらかさないで・・・」友美は顔を上げて相場を見つめた。
「はぐらかす?私は真剣だよ。私が嫌いというわけじゃないだろ?」
「そういう問題じゃないわ・・・」友美は深い溜息を吐いた。
「何が問題なんだ・・・」相場は苛立ったように言った。
「私・・・」友美は園田の方を見た。
何で園田さんを見るんだ。相場は苛立つ自分を抑えようとする。理屈ではわかっているつもりだが、友美を幸せにするとベッドに横たわる直也に約束したのだ。
「私には好きな人がいるの・・・」
相場はいきなり頭を殴られたような気がした。かっと目を見開き呆然とする。まさか・・・。
園田はパスタをソースに絡める手を止めて二人を見た。相場がプロポーズを断られる場面に、立ち会う羽目になるとは思ってもみなかったのである。
「一体誰なんだ?それになぜここでこんな話をしなきゃならないんだ」
「二人で話していても堂々巡りだからよ。誰かがそばにいてくれたら、貴方も落ち着いて冷静になって話せると・・・」
「その誰かが園田さんというわけ・・・」
「席をはずすよ。あの二人にパスタを持っていかないといけないし・・・」
「で、誰なんだ。その君の好きな人って言うのは・・・。お互いに同じ気持ちというわけか・・・」相場は園田を睨んだ。
園田は二人分のパスタの皿を手にしたまま動けなくなった。
「わからないわ・・・」友美は消え入りそうな声で言った。
「わからない?」
「私の気持ちには気づいてないわ・・・。私の片思いよ・・・。とてもいい人・・・。その人と居ると心が落ち着くの・・・」
園田はその場から逃げ出したかった。もちろん相場に同情もしていたが、友美が思う相手が誰なのか知りたいと思うと同時に聞きたくはなかった。友美の口から聞かされることが怖かったのだ。
「その男はまったく君の気持ちに気がついていないというのか?そんなやつのことが好きでも、どうにもならないじゃないか。君は幸せにならなきゃだめだ。私なら君を幸せにできる。直也にも約束した。君を守ると・・」
「貴方を愛してないわ・・・」
園田は友美から相場に目を向ける。相場に同情し、そして自分を哀れんだ。友美を思う気持ちは自分とて同じだ。相場が相手なら諦めもつく、友美と自分は年も離れ、彼女にはふさわしくないとわかっている。
「貴方は直也さんの親友よ。私はその人の妻というだけよ。千春と私は親友で、貴方は千春と同じ親友の妹として守ろうとしているだけよ。親友の妹たちを守るのが義務だと思い込んでるだけ・・・」
「友美さんそれは違うよ・・・」園田は相場を弁護するように言った。
「私、気がついたの・・・。相場さんが大切な人だからこそ、相場さんの優しさに甘えて逃げ込むのは卑怯だって・・・。相場さんは私を幸せにしてくれるって疑ってもいない。でも、大切なのは自分の正直な気持ちだって・・・」
千春はポプラのざわめきが聞こえたような気がした。自然と千春はカウンターの横に立っている園田と、カウンターにいる二人のへと視線を向けた。
店の外では季節風が駆け抜けて行った。
店の外では季節風が駆け抜けて行った。
