潮風の薫り | フレンズ

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鼻につく潮の匂い。
懐かしいと思うにはあまり時は流れてはいない。
すぎた半年という時間を長いというか、それとも短いというのか。
私にとってはそれが短く感じてしまう。それ程に、過ぎた時間が濃密だったのだろうと思う。
短期間の帰省なのだ、ゆっくりとしよう。
そう思いつつ、足を早める。
九月の頭と言えば大学生にとっては、未だ夏季休暇中。
規制ラッシュの止んだいい塩梅だろう。
港町の外れ、バスを降りて程なくすれば住宅街がちらほらと見える。
そこにある一軒家が私の実家。漁師の父、それを手伝う母。
一人娘の私が上京したいと言った時は、ひどい騒ぎだった。
特に母が。
当時は一方的な印象で父が猛反対するかと思ったが、その予想はいい意味で裏切られ、父が母を説得する形でことな気を得た。
くすりと笑う私を横目に見ながら野良猫が通り過ぎる。
すましたような様子にさえ口元がほころぶ。
大きなボストンバッグには着替えの他にもお土産や、もうすぐ結婚記念日を迎える両親の為のプレゼントもある。
なんとなくの気まぐれで買った物だが、二人はきっと喜んでくれるだろう。
そうだと、いいな。
ぽつり、とつぶやく。
まだまだ陽射しが強い。今の時間だと二人とも漁港に出ているだろうか。
なら少し遠回りになるけれど、顔を出して行こうか、
家の鍵はきっといつもの場所に隠してあるはずだから、先に荷物だけでも置いて行こうか。
少しだけ迷ったが、一度漁港まで顔を出すことにする。
「ただいま」
まずはなにより二人にそう伝えたいから。