桜と#6 | フレンズ

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揺れる大樹に手を伸ばすと、まるで私がそれであるように思えた。


まだ、つぼみもつけないこの木に私は、


八重舞花はその意識を挿し木した。


思いもよらないことだ。


少し前まで人間だった私がこうして人の形を失っているのだから。


大地から、水を。


空から、大気からは空気を。


厳密にいえば違うことのようだと、この体になってみれば気付くのだがそんなことはどうだっていい。


私の一生はこれを感じるためだけに費やされるのだ。


舞花は思った。


今、人でなくて良かった、いや涙を持つ生き物でなくてよかったと。


その身を小さくゆすることしか許されぬ、大樹になってこれでもかとばかりに舞花は泣いた。


両親や友達、学校、将来。


夢だってあった。


大好きな男の子だっていた。


儚い心が、音を立てて少しずつ少しづつ壊れていた。


(わたしが……なんで……)


舞花自身どうしてこうなったのかなど知る由もない。


自分にそっくりななにかに出会って、触れられて、気付くとここにいた。


山の中腹、ひっそりと佇むそれは花をつけないことで有名な、枝垂桜だった。


しかし、ある瞬間から狂ったような季節にその花を咲かせるようになる。


舞花が、意識のみの存在となりここへ現れ、老木と存在を共有した瞬間だ。


奇跡などと安直な言葉で表すことのできない現象。


ただそこにいることしかできぬ少女は、そこで出会うことになった。


もう一人の自分とは異なる異質な存在。


「のぅ……嬢さんや」


乾いたその声は、舞花という存在にとって何よりも大切なものになっていく。


「え?」


その存在、老いた翁の様相をとるそれは、にっこりと笑っていた。


「はじめまして、じゃのう」