この携帯の存在を知っているものはわずかだ。
従者兼世話係の烏丸。
そして漆の実兄 折野 混合(こんごう)
父の折野 伊丹(いたみ)
この三人だけだ。
父は兄を経由してしか指示を出さないし、烏丸は普段携帯を持っているだけで使おうとしない。
なら今連絡をよこしてくるのは、混合しかありえないのだ。
携帯を開くと、兄の番号が表示される。
はぁと一つため息をついてから、電話にでる。
「何だよ。」
「実の兄である俺にその言葉使いこそなんなんだ?」
「変えてほしいなら、お前もそんなもん使ってしゃべるなよ。」
明らかにキーがおかしいその声はボイスチェンジャーを使っていることを明白にしていた。
「信用してないのだからしょうがないだろ?親殺しが。」
「・・・」
「まあいいさ。今はそんなことより仕事の話だ。
今日は本家には行かず、現場に直行してくれ。場所はメールで送信するからそれで確認しろ。今回はLV2の使用も考えている。」
LV2の使用許可とはずいぶん物々しい話のようだ。
「・・・敵は?」
「正直なところ、わからない。正体がつかめんのだ。ただ・・・。」
「ただ?」
珍しく兄がいいよどむのを聞き、漆は少しだけ緊張する。
「おそらく、創造色を使う可能性が高い。そして、LVはおそらく2だ。」
「・・・そう考える理由は?」
正直、心の中で絶句していた。
色の種類は大きく分けて二つ。
創造色と固有色だ。
それをさらに細分化すると、創造色は5色、固有色は9色、合計14色に分かれる。
創造色と固有色の違いはとても簡単で、生まれ持つことができるかどうか、だ。
固有色は9種のうち必ずどれか一つを生まれた瞬間に宿すのに対して、
創造色は特殊な行程を踏まねば宿すことができない。
これに例外はなく、生まれたときから創造色、なんてことはこの世界の歴史が始まって一度も無い。
そんな創造色をLV2まであげる。
それは種類によってはどのような偉業よりも華々しく賛美され、
どのような愚行を冒すよりも嘲笑を受ける。
そしてこの後混合が言い放った一言に漆はさらなる戦慄を覚えることになった。
「率直に言う。黒と白のLV2が同時且つ多発に観測された。つまり…」
「灰色…?」
灰色。それは創造色の中でもっとも獲得が困難であり、レベルをあげることはほぼ不可能とまでいわれた色だった。
全世界中で今灰色のLV2を持つものは公式には3人、非公式で混合も含まれる。