夏の風物詩に”カキ氷”がある。
猛暑の季節が到来すると、カキ氷の味を思い出す。
7歳を迎えた誕生日の暑い日に、母に連れられ夜店に行った。
まだ、味わった事がなかった、カキ氷に舌鼓を打った。
甘いシロップがかかったカキ氷を舌に乗せた。
頭の芯が冷たさに痺れた。
母は「カキ氷一杯が誕生日のお祝いだと」悲しい顔をしポツリと呟いた。
私は苦労続きの母に「お腹が冷えた!」と少しカキ氷を残した。
母に「これ!あげる!」カキ氷の器を手渡した。
夜店のカーバイトの明かりが、母の横顔を照らした。
母は「戦争が!憎い!」と語気を強めた。
微かに母の目は潤み鋭かった。
カキ氷を誕生祝いに貰った私も、母の苦労を思い熱い涙が込み上げた。
思えば”戦争の傷跡”は、私の家庭を襲い”カキ氷一杯”は大変な、
出費だったはずだ。
戦争を憎んだ母も茹だる暑い季節に逝いた。
以来、猛暑の季節は母を忍ぶ”カキ氷”が一服の清涼剤となった。
