14さいのれーなちゃんと、17歳のいつかちゃんの二人旅。
天真爛漫で誰とでもすぐ仲良くなる可愛いれーなちゃんと、しっかり者で警戒心の強いいつかちゃん。
私はどっちの女の子かなーって読み始める。
江國さんの小説には、女の子が二人以上出てくるものが多くて、いつも、私だったら誰かなーって思いながら読み進める。
(なんとなく、『ホリーガーデン』の果歩と静江を思い出しながら読んでいく。『ホリーガーデン』何十回も読み直してる江國さんの小説)
『彼女たちの場合は』 江國香織
いつかちゃんとれーなちゃんの旅が終わる頃、この長編小説が終わる頃、この小説はどんどん良くなっていった。
今を生きること、私たちは何にでもなれること、そして、忘れてしまうこと。
忘れたくないこともどんどん記憶からは薄れてしまうけど、心や体に残っていくんだよ。
それは、切なくて尊いこと。
人生って旅だよね。
これから起こること、たった1秒後のことだって、私達は知らない。
長い物語は、2人の旅をずっと描いている。
2人は生きている。
物語が終わってもこの先もあるように、活き活きとはっきりと見える。
2人のこころの動きがとても正確で、リアルで、私も一緒に旅をした。
あ、そうか。
私は、れーなちゃんでもいつかちゃんでもなく、れーなちゃんが抱いてるうさぎのぬいぐるみなのかも。
うさぎは、もしかしたら読者の私なのかもしれない。
いつかちゃんとれーなちゃんのイメージの花、とうさぎ。
どんなに言葉を尽くしても、その時の空気感は誰にも本当のところを正確に伝えることはできない。
2人は旅を始める時に約束をした。
その一つが、
「この旅で起きた出来事は永遠に2人だけの秘密にすること」
しかし、最後の方でれーなは気付く。
「あれは、なんていうか、無駄な約束だったね」
だって、
「たとえばこの朝がどんなにすばらしいかっていうことはさ、いまここにいない誰かにあとから話しても、絶対わかってもらえないと思わない?」
そして、
「誰かに話しても話さなくても関係なくて、なにもかも自動的に二人だけの秘密になっちゃうんだよ?すごくない?」
……………。
私の心の琴線が震えた。
もう、素晴らしい!
理屈じゃない言葉の並び方に、生きることが詰まってる
私の人生は私だけのものなのだ。
全ては自動的に秘密で、それは圧倒的に孤独で、だけどなんて安らかなことなんだろう
途方もなくわくわくしてきたよ
ふふふ
でも、江國さんは、2人のそのすごい秘密、繊細な空気感を読者に共有させてくれる魔法を持ってるの
だから、江國香織さんがだーーいすき
カモミールの花が咲いた
フレッシュカモミールティー
小説の開放感と、元気いっぱいなカモミールの香り、鳥のさえずり、通り抜ける風、揺れる濃くて強い緑。
これも私だけの秘密なのだ
人生は愉しみと歓びに満ちている
読んでいただきありがとうございました