まだだ、まだ我慢が出来る、まるで自分自身が、自分を諭すように
ストーブのスイッチを入れる事を、我慢に我慢を重ね続けていましたが
遂に、ストーブの、あの身体を包み込む、温かさと優しさ、その誘惑に負けてしまい
ポチッと、スイッチをONにしてしまいました。
ふふふふっ、これは暖かい、真っ白になっていた指先に、まるで嘘のように血液が行き渡り
毛細血管を広げては赤みを帯び、全ての指が完全に自由を取り戻し、寒さに縛られていた
辛い弾圧から開放されて行く指の姿は、正に、社会の動きを変えた革命の後の国家とも
感じてしまうぐらいの、我慢に我慢を重ねたこそ得られる、ご褒美、開放感なのであろう。
寒い、即、スイッチON、いつも快適、ニコニコ快適生活、しかしその影には、浪費と言う
どす黒く恐ろしい二文字が、常に憑依をし人々の心に牙を向きながら、その存在は空気のように
透明で見えない姿と成り果てていて、その恐ろしさを、みんな忘れてしまっているのだろう。
消費と浪費があってこそ、産業が発展し、文化的な生活が守られ、国家の姿が維持されて行く
浪費行動こそが人々の原動力であり、国家の命なのであると、公衆の前で演説をする議員達に
大きな拍手を贈る、大衆達の姿を眺めていると、快適さに心を奪われ心を失い溺れた者達は
浪費と金の流れが密接に繋がっている、無駄が無駄を呼ぶスパイラル構造がある中に存在する
快適さと言う悦楽の虜にされ、欲と物を動かし金を創り動かしている、それぞれの上に立つ
指導者達に完全に心を奪われ、その姿は、まるで洗脳された宗教信者のように、逆らいもせず
疑う事もなく多くの者達は、統治され支配されながら、毎日を暮らしている姿が見えるのである。
あまりの寒さに指が凍え動かなくなり、スイッチを入れるべきか、それとも我慢すべきかと
心の葛藤があったからこそ、人々の浪費行動について、ふと、考えを進めたてしまったのだが
正に、我慢なき生活、我慢なき世の中を続けてれば、何もかもが簡単で便利に成り過ぎていて
あまりもの快適さに溺れ、浪費行動をしていても、それが普通の暮らしだと、麻痺をしてしまった
自らの心を見つめ直す事も、その姿を鏡に映す事も出来ないのだと、痛烈に感じた経験であったが
室内の温度が21℃まで上がり、身体も指も暖まった時点で、ストーブのスイッチを
OFFにした事は言う迄もない事であるが、まだ気温が上昇の気配もなく、太陽も厚い雲に隠れ
顔を見せる素振りもなく、室内温度を示すディジタル温度計の数字は、また下がり始めている。
峠では、何やら雪が降っているとの情報もあり、根室沖に進んだ、又三郎を探しにでも
雪雲君が追い掛けて来たのだろうか、冬も直ぐそこに来ている、今年も原油の高騰があるのか
厳寒の地に住む者達の、家計を圧迫する切実な問題なのである、まあ本当に次から次へと悩みが
出て来ては、その悩みが解決されない侭、悩みが尽きない日本国の姿である。
どうなる日本国、どうにかしてくれ、有象無象の日本国国民と、日本国政府なのである。
おわり