南アフリカの大統領だったネルソン・マンデラ(Nelson Mandela)の改革を描いた映画「インビクタス/負けざる者たち」(INVICTUS)の試写を観ました。書こうと思いつつ日が過ぎていましたが、少し書きます。いつものように、「ネタバレ」がありますので、見たくない方はブラウザの×でこのサイトを消すか、他のサイトへ移動をお願い致します。
2010年2月5日(金)全国ロードショーになります。
■公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/invictus/
↓それでは、試写のレビューを開始します
'INVICTUS'とは「征服されざるもの」という意味。
ポスターなどを見た方の映画への第一印象は、練習の末にラグビーのチームが強くなる、スポーツ物の「感動大作」ではないでしょうか?私自身も、実際に映像を観るまでは、そのような印象を持っていました。しかし、その印象は大きな間違いでした。
この映画、ただのスポーツ映画ではありません。
歴史上の実際の出来事ですが、南アフリカでは、白人による人種差別政策「アパルトヘイト(Apartheid)」が行われていました。黒人の長い暗黒時代は、アパルトヘイトの終了後、1994年に終わりを告げます。
27年間、独房に監禁され暮らしていたネルソン・マンデラ(Nelson Rolihlahla Mandela/役・モーガン・フリーマン)は、黒人を含めた総選挙により、南アフリカで初めての黒人大統領に選ばれたのです。
物語はここから始まります。
アパルトヘイトの中、上下関係にあった白人と黒人が、本当の意味で平等な関係になる方法を、27年間の独房生活の中考え、実行に移したのが、ネルソン・マンデラでした。
その方法は、ラグビーチームの育成でした。1995年のラグビーワールドカップの優勝国をみなさんはご存知でしょうか?映画になるくらいですから想像できると思いますが、優勝するのはフランソワ・ピナール(マット・デイモン)率いる南アフリカの代表チーム「スプリング・ボクス」です。
このチームは、白人によるアパルトヘイト下で作られたチームです。当然、南アフリカに住む黒人は、「スプリング・ボクス」を嫌い、イメージカラーである「緑」と「金」を嫌っていました。
ネルソン・マンデラが大統領に就任した後、黒人はこのイメージカラーと名前を変更しようとします。新しい南アフリカを目指すなら、当たり前の行動に思えますが、ネルソン・マンデラ大統領は、多数決の意見に反対し、チームの継続を申し出ます。
なぜ、彼が反対をしたのか、あなたには理解出来ますか?
大統領に白人が作ったチーム名を変更することは簡単でしたが、その行動が白人を追い込むことになる可能性に、危機感を抱いたのです。
ネルソン・マンデラ大統領の目的は、白人と黒人を平等な関係にすることにあり、距離を深めることではありません。だから、代表チームの名前やイメージを変更するのではなく、チームの強化を目指しました。
ネルソン・マンデラ大統領と、「スプリング・ボクス」のキャプテンであるフランソワ・ピナール(マット・デイモン)の共闘が始まります。…と、ここから映画の大事な部分に入りますので、さすがに書けません。
後は公開後のお楽しみということで、感想を書きます。
一言で書くなら、「日本の政治家は全員この映画を見るべき」です。映画ですので、感動的に作られてはいますが、何が人々を笑顔にし、1つにするのかということが分かると思います。
政治とスポーツは切り離して考えたいというのが、一般的な考えです。その観点から見ると、大統領はスポーツを政治に利用しており、納得出来ないという方もいるかもしれません。
しかし、人種差別をなくし、国力を上げるという目的のために、大統領と選手が心を通わし、1つの方向に向かい結果を出したことは、歴史上の事実であり、否定できるものではないのです。
むしろ、その方法には見習うべき部分があると私は思いました。
人種差別という大きな問題に立ち向かった大統領の話を観て下さい。
アパルトヘイトから開放された後の南アフリカには差別がないのか?という話になると、現時点では黒人同士の差別などもあるようで、全てがクリアされたわけではありません。
全てが解決されていなくとも、進むべき方向は明らかです。終わりなき争いには、終止符を打たねばなりません。この映画は、何かをする時に何をすべきなのか、その選択の重要性を考えさせられる映画でした。
映画の中に、日本が何度か出ていました。その中でも印象的なものは、モーガン・フリーマン演じるネルソン・マンデラ大統領が、移動中の車の中で「1試合の中でか?」と驚いた様子で話した内容です。
日本の壮大な「負け」について、です。
気になったので1995年当時のワールドカップの結果を調べました。
■4 June 1995
Japan 17 – 145 New Zealand
Free State Stadium, Bloemfontein
Attendance: 17,000
http://en.wikipedia.org/wiki/1995_Rugby_World_Cup
日本は、ニュージーランドの代表チーム「オールブラックス」に、1試合で145点を入れられ負けています。入れたのは17点。この描写があった時、周囲には笑っている方が多かった。笑いを誘うような演出でしたので、当然私も笑いましたが、「ネタ」ならくやしいと思い調べたのです。
結局、本当でしたので、私の気持ちはご想像下さい。
この映画は、「ミリオンダラー・ベイビー」や「硫黄島からの手紙 」・「グラン・トリノ」と興味深い作品を手掛けるクリント・イーストウッド監督の作品です。そして、主演しているモーガン・フリーマンの総指揮でした。
クリント・イーストウッド監督と言えば、スパイク・リー監督による批判を思い出します。「父親たちの星条旗」と「硫黄島からの手紙 」に、黒人兵士が出ていないことが問題とされました。
批判に対し出した答えがこの映画であるようにも思えました。
伝えたいことを全て伝えきれない場合もあるのかもしれません。
思ったことをダラダラ一気に書くいつもの悪い癖が出ていますが、このように私にとっては、色々と考えさせられる映画であり良かったです。実話ベースですので、刺激的なストーリーを求める方には、少し物足りないかもしれませんが、観て欲しい映画だと思いました。
歴史を変えるのは、強い立場の人だけではありません
■映画『インビクタス/負けざる物たち』予告編
ストーリー 18
キャラクター 20
演出 15
音楽 18
バランス 17
TOTAL 88/100