「メールこないのってさあ、腹たたない?」
恵理はそう言った。
かなりムカムカしていそうな口調だった。
「相手にも都合あるし、まあ仕方ないんじゃないの?」
ここで私が同調しても仕方がないと思って、とり合えず恵理をなだめてみた。
「あんたっていっつも、そう言うわよね!」
矛先が私に向いた。
困ったな。
多分恵理は機嫌が悪い。
腹の虫の居所が悪いってやつだろう。
でも、私にどうしろっていうのよ?
メールの返事を送らないのは私じゃなくて、彼なんでしょう?
そう言っても火に油を注ぐだけな気がして、言うのをやめた。
恵理に言うのをやめる事って多い。
変えられないことを言っても仕方がない気がする。
恵理は愚痴りたいだけなんだろう。
話を聞いて欲しいんでしょう?
女なんてそんなもんだよね。
意見をされたいんじゃなくって、話を聞いて欲しいだけなんだから。
私がそんなことを考えている間も、恵理の彼からメールが1日1通しか来ないことへの愚痴は続いて。
彼とはもういいやと、言っている。
そう決めたならそうすればいいのに。
私になんか話さずにね。
でも、それが決められないから誰かに話したいんだよね。
自分の言葉で自分の心を固めたいんだと思うよ。
だから、まあ、私でよければ話ぐらいは聞くからさ。
少なくとも、私たち友達って思ってるし。
あ、どこかでジャスミンの花の香りがする・・・
雨上がりの夜に漂うジャスミンの香りは、結構好きかもしれない。
雨の匂いと混じった甘い香り。
そんなことを思いながら、駅までの道を恵理と歩いた。
「決めるのは自分だよ」
恵理にそれだけ言って、電車に乗り込んだ。
また、明日ね。
ちゃんと聞くからさ。
元気だしなよ
ホームに残った恵理に、バイバイと手を振りながら心の中でこっそり思った。