どこまで耐えられますか? -2ページ目
店の鍵を閉めた頃にはもうカラスがゴミを漁り始めていた。



携帯を見ると、不在着信が4件

彼女のひまりが一件、後は母親だった



「なんだよ朝から」



「なによ、はやとが昨日電話かけてきたんでしょ」



「あ、そうだ忘れてた」



俺が一番にかけ直したのは母親だった

これは、マザコンだからとか決してそんなふうに思わないでほしい。れっきとした理由があるのだ。



「なあ、ちょっとお金足りないんだよな今月」



「またなの?先月も先々月もここ最近ずっとじゃない。そんななら実家に戻ってきなよお」



ねこなで声の母の声に苛つき俺は声を少し荒げる



「俺は小さい頃からずっと我慢させられてたんだよ。親父に殴られて蹴られて、親父がいなくなったあと、お前は夜仕事でいなくて俺は泣きながらいつも姉ちゃんと寝てたんだ今少しワガママ言うくらい許されるだろ」



「もお、わかった。わかったよお。でも、いつでも戻っておいでよお、お姉ちゃんも心配してるよお」



それはそうだろう、母には内緒にしてくれと姉貴にも1週間前にお金を振り込んでもらっているからだろう



じゃあすぐ振り込んどいてなあと電話を切り急いでひまりにかけなおす



「ひーまちゃん?おはよ!今から朝ごはんでも食べ行く?今日もごちそうしちゃうよー」




俺はギャンブルもしないし、仕事柄的に酒も他所に飲み行く時間もない

だからお金はなくならないはずなのに、きっとこのご馳走グセでお金がなくなっているのかもしれない



でも男はそれで正解だと思っている

お金なんて後からいくらでもついてくるんだ



「今日ね、なんか、カニ食べたい」



朝からカニを食べたいなんていう女の体力はもちろんのこと、厚かましいとも思う



でもいいんだ



なぜなら顔が可愛い。皆が隙あらば手を出そうとしていた。あのカナタですら。

でもひまりは俺を選んだんだ。



ひまりは今時のSNSばえするような女で

「私は普通の女と違う」が口癖の少し顔がかわいい普通の女だった。



結局朝からカニを食える所は思いつかず

回転寿司よりは高いチェーン店の寿司屋へ入った



怒ると思ったがひまりは案外喜んでいてそーゆうところが好きだと思った。



向かい合ってカニ汁を頬張っていると

ひまりがこちらをずっと見つめているので

「ん?」と、にこりとしてみる

女はこうゆうふとした笑顔に弱いからだ。





「はやと、、、箸の持ち方ひどすぎるよ」




俺は不自然に上げた口角をギュッと戻して「まあでも、苦労したことないよこれで」とカニ汁と呼んでいいものなのかわからないくらいに細いカニの足を箸で掴んでみせた。



ひまりは呆れた顔でタッチパネルに顔を戻し、ウニを3個追加していた

カニが食べたかったんだろうお前は。くそ。

俺が払ってやってるのに、嫌なこと言われてウニまで注文されてすごく不愉快だ。くそ。

なんて女だ。こんな女、大事にしようと思った俺がバカだった。スーパーでカニカマでも買って公園で食えばよかったんだ。



昨日姉貴から振り込んでもらった一万円はここで全てなくなった

まあいいもうそろそろ母親からのお金も振り込まれるであろう



「ねえここ寄ろう」

ひまりに腕を引っ張られ

次は何をねだられるんだと店を見ると

そこは百均だった。



いくらねだってもかまわない。好きなものどれでもいいぞ。かわいい女だ。



「あ!あった!ちょっと待ってて買ってくる!」



俺が買ってやるのにそのくらい、、、と思ったが

100円でかっこつけてると思われるのも癪なので黙って待っていた



「はい!はやとくんどーぞ!プレゼント!」



袋の中をのぞくと、そこには子供用のトレーニング箸が入っていた。



「、、、、、、、、、」



言葉にならず下をうつむく俺を覗き込むように「怒った?」と心配そうにしてるひまりを思い切り抱きしめた




この子を一生大事にするんだ。

箸の持ち方をバカにされることは沢山あったけど、治そうとしてくれた女はひまりが初めてだった。



ひまりの肩にに顔を埋めながら、明日は何食べたい?と聞くと「んー、、、多分しゃぶしゃぶ!」と華やかな声で返ってきた



お前はお金を食いたいだけだろう。

愛してるよひまり。