こんなユーモラスな装丁なので

「対岸の彼女」みたいな雰囲気かなぁ~、と思ってた。

しかも、なぜか「八月の蝉」だと思ってた(笑)

それじゃ普通だし!!


そんなゆるテンションで読み始めたら、とんでもなかった。



オープニングから、不倫相手の娘(赤ちゃん)を誘拐しちゃうんですもの。

その犯人(女性)の心情が生々しくて痛々しくて、

「ええぇコッチ系!?」と思いながらやめられず。

前半は特に日記形式になっていることもあり、

手記を読んでいるようで。


屈折ともいえるし、純粋ともいえる。

とはいえ、どんな事情にしても誘拐だし同情に値しないのに、

「なんとかして逃がしてあげたい」と思ってしまう。


そんな感じで、朝まで読みふけってしまいました。


不倫関係や家族関係の背景は

全編を通して少しずつ明らかになっていくのだけれど、

もうまさに「女のサガと男のサガ」ですね…。


成長した娘の複雑さがまた、切なくて。


あの娘は逃げ続けたら幸せだったのか、

誘拐されなければ幸せだったのか。

なんだ?家族の幸せって。


正直、家族関係ってタイヘンだよなって思う時もあるけど、

(お互いの期待とか誤解とかが極端でストレートだからか…)

それでも、家族なのに…とか、家族だから…って思うこと自体、

角田さんのいう「どうしようもなく家族なんだ」ってこと、

ひとつの「家族愛」なのだろうな。

血のつながりということだけではなくて、

家族という楔でつながれているということ。


そして、あの穏やかなエンディングはきっと、

娘とあの女の人もまた家族ってことだよね…ってワタシは思います。




▽「八日目の蝉」角田 光代

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逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるだろうか--理性をゆるがす愛があり、罪にもそそぐ光があった。家族という枠組みの意味を探る、著者初めての長篇サスペンス。