陸山会事件の被疑事実は、いわゆる「期ずれ」のみ。検察の主張どおり、実際の取引の日付が異なることで、すなわち違法、あるいは犯罪と言えるとは考えられない。
 政治資金収支報告書の訂正は、毎年数100件の単位であるという。意図的ではないミスは日常的に多く発生しているということ。これはミスに気づいたから訂正しているが、気づかないで訂正しないままのものも少なくないだろう。

 例えば、企業の決算も毎年多くがミスがあったとして、あるいは税務署と見解が異なったとして、修正される。このうち、脱税目的や赤字を誤魔化すために、わざと嘘の決算をすると、粉飾決算として、犯罪となる。つまり、事実と異なるもの全てが犯罪なのではなく、悪質な意図をもって行われたものだけが、犯罪行為なのである。

 企業の決算を例にとったが、経営や会計に携わっていない人にとって、ピンと来ないかも知れない。
 逆に言うと、企業経営や経理事務に携わる人であれば、わかるはずである。つまり、「この程度の形式的なミスは、いくらでもあり得る。こんなことが刑事犯罪扱いされてはたまらない。」と。

 そういう意味では、他の政治家は、今回のような被疑事実が罪に問われること自体の異常性を認識しているはずだ。
 「自分にもこの程度の事実と報告書の違いは少なからずある。もし仮に、特捜のターゲットが自分になったら、まちがいなく起訴される。」と。
 でもそこは、さすが面の皮の厚い政治家の面々である。反小沢や他党の政治家たちの多くが、自分はこのようなことは全くないかのように、小沢攻撃をし、「証人喚問」だの「議員辞職勧告」だの騒いでいる。

 つまり、政治資金収支報告書に「期ずれ」があったとしても、その悪質性が証明されなければ、これを犯罪とすることは不当な判断である。