最近、YouTube のおすすめで

千年女優という

今敏監督のアニメ映画の

トレーラーが表示された。

面白そうだったので

Apple TVで視聴した。


主人公は往年の大女優。

かつての活躍の場であった

映画撮影所が老朽化のため

取り壊されるのを機に

インタビューを受ける。

インタビューの企画は

若い頃から女優の大ファンだった

映像会社社長によるものだ。


そのインタビューの際、

女優は社長から

鍵を渡された。

その鍵は

女優が失くしたと思っていたもので

彼女の人生にとって

最も重要な思い出にまつわる品だった。


彼女は鍵を受け取ると

自分の今までの人生について話し出す。

それは実際の人生と

女優として演じた様々な人生とが

あたかも彼女が

輪廻転生しているかの様に

交錯しているのだが

どちらにも

女優が追い求める想い人の影がある。


鍵はもともと女優の想い人の持ち物だった。

女優は少女の頃

思想犯として追われていた男性に出会った。

それは

追われていた彼を家の蔵に匿ったとき

「大事なものを開ける鍵」として

見せてもらったものである。

画家になる夢を語る彼に

少女は心惹かれるが

彼女の家にも追手が迫り

男性は何処かに去っていった。

そして少女は男性が落とした鍵を見つける。


この鍵はテーマパークの入場券のように

少女を女優になる道へと導く。

彼女は自分が女優になり満州に行けば

想い人に会えると思ったのだ。

しかし幸せの青い鳥のごとく

想い人には会えそうで会えない。

自分が女優であれば

想い人が自分を見つけて

再会できるだろう

と思い続けたものの

ある時

大事な鍵を紛失してしまう。

そこで想いを諦め

映画監督の求婚に応じるが

後に鍵の紛失は

監督の奸計であったことを知る。


その後

女優はある映画の撮影中

現場のセット倒壊事故に遭い

また鍵を紛失し

急に世間から姿をくらまし

大女優という立場から退いた。

実はその鍵は

現映像会社社長に拾われており

映画冒頭に出てきた

社長が女優に鍵を渡す場面の

答え合わせがここにある。


女優は突如発作を起こし

病院のベッドで

今際の際に

想い人の鍵を再び手にできた事に

安心し喜びながら息を引き取る。


最後の場面で

女優は宇宙飛行士の役を演じる

若い頃の自分の姿になって

「あの人を追いかけている私が好き」

と言う。

晴れ晴れとした顔で天に帰っていくかのように。


いろいろな事があった

彼女の人生ドラマ。

その最後の台詞に

誰もが人生の中で

追い求めているのは

実は

誰か他の人や何かではなく

自分自身にとっての経験

なのではないかと

暗喩しているように思った。