キャッシュフロー氷河期の続いていた弊社にも、ようやく春の兆しが見えてきた。UK本社の一番偉い人が出資者を見つけてきて話をまとめてくれた。

その出資者というのは20年くらい前に社員だった人で、実は実家が事業を営み資産家だったらしい。


チームの中から私を入れて4人、出資者とそれぞれ個別面談をすることになった。面談メンバーは、財務経理責任者、購買責任者、マーケティング責任者、そして私。


シンガポールのボスは個別面談の前に、何を出資者に言ってよいか、言わないべきかを指示してきた。

出資者には現在使用しているシステム不具合の件を言わないように、とのこと。

ボスは新しいシステムを導入したいと知り合いのサービス業者まで当たりをつけてトライアルシステムまで作らせておいて、いざ出資者にその話をしたら、現在のシステムを継続使用したい考えだと却下されたらしい。会社ってこんなもんだよなと思った。


面談で私は出資者に携わってきた業務の説明や経緯、今後の展望についてざっくり話をした。

私の出資者に対する印象は、真っ当に商売を考えている人だな、である。不動産一棟ぶんくらいの出資をできる事業家だからそれは当然ではあるのだが。


商取引は農業みたいなものだと私は思っている。

売るだけではダメ、いくらか手元に残してその種をまた取引畑に蒔いてさらに増やしていく。取引畑は信用という肥料で良い土壌になっていく。これは次の収穫のためにとても大切。単純だけど世界共通の法則。


個別面談の後、シンガポールのボスから面談組4人にTeamsで出資者とどんな話をしたかという確認のミーティングがあった。


財務経理責任者: キャッシュ不足の問題、ヘッドアカウントが足りない問題を出資者に話した。


マーケティング責任者: システム不具合、購買部門の買い付けミス、マーケットの反応の悪さ、人員不足が元凶であると出資者に話した。


購買責任者: システム不具合、買付資金の不足を原因として説明。出資者から買い付けカテゴリーのアンバランスを指摘され理由を求められた。出資者から今後新規分野に進出するなら何かと宿題を出された。


私: 過去5年の市場の変化と変化への対応が遅かった、特定の売れ筋に頼り過ぎたのが現在の状況に至った主な原因、内的要因環境は社内でコントロール可能なのでむしろ外的環境要因の対策体制を整えることが優先事項という考えを説明。出資者から既存ルート、新規ルート、コストを抑えたマーケティング方法についての案を次回までの宿題として出された。


ボスは言って欲しくなかったようだが、マーケ責任者と購買責任者はシステム不具合に言及してしまった。


出資者はそれぞれの話を聞いてどう思っただろう。

もし私が出資者の立場だったら、別の案件を探してしまうかもなあ。


というのがイースター休暇前の先週の話。


休暇明けからシンガポールのボスが体調不良とのことで気持ち悪いほど静かである。

シンガポールのボスは、何か問題が起こり責任者がジャッジを求められる場面になるといつも体調不良になる。状況次第で病弱になるマネジメントを見るといつも、滝に打たれて修行して来いと心の中で思ってしまう。


5/1から出資者はオフィスで勤務開始と聞いていたが、総務人事によるとそれが延びたそうだ。

出資者は投資を考え直したか?


出資者が勤務開始したら、支社長がシンガポールのボスと合わせて2人?いや、立場的には出資者の方が上だ。だってUKの一番偉い人の倍以上出資するのだから。


何となくだが、UKの偉い人と出資者とはシンガポールのボスをすっ飛ばして話をしているような気がする。


シンガポールのボスはご退場を願われるのだろうか。


昨年の今頃は、前の財務経理責任者がボスの在庫帳簿操作を発見しUK本社財務経理に報告したことで両者が領域展開を発動しオフィスは壮絶な死滅回遊コロニーと化しバトルが繰り広げられていた。

前の財務経理責任者は、誰もが知る某多国籍企業から転籍してきた人で、誰に対しても要求は高かったが、キャッシュフローをはじめとした諸々の管理はきっちりしていた。が、ボスが購買責任者にカンパニーカードでの支払いを許可し、彼の妻(現在の財務経理責任者)を財務経理部にメンバーとして迎えたころから何かが起きそうな雰囲気になってきた。結果として、初夏に前の財務経理責任者が退職した。そんな事があった。


さて、今年も春のドラマが始まりましたよっ、と。