わたしのバイトがもうすぐで終わるという頃、レジに1人のお客さんが会計にやってきた。
わたしはファミレスで働いているのだけど、お客さんの層は様々で、子連れの家族だったり、1人で来るおじいさんだったり、集団で来る高校生だったり、本当に色々。
ときどき、怖いなと感じるお客さんもいる。
例えば、怒った口調で料理を急かしたり、レジに置いてある呼び出しベルを何度も強く鳴らしたり、食べ終わった皿を下げる時、まるでわたしがいないかのように、完全に無視したり。
まあ、毎日来るというわけでもないから、そこまで気に病んだりはしない。その日たまたま虫の居所が悪かっただけかもしれないし。
今日話すお客さんは、皿を下げるとき何度もお礼を言ってくれたし、普段から気遣いがとてもよくできる方なのだろうなと感じた。
そのお客さんがレジに来て、会計をし終わった直後。
お釣りの30円を、何の迷いもなくレジ横の募金箱に入れた。いつもお釣りを募金しているのか?と思わせるような、無駄のない動きで。
わたしはそれを見たとき、なぜかとても嬉しくなって、「ありがとうございました」という声が少し上ずった。
わたしは普段、募金はしない。
端的に言うとわたしはケチなので、この小銭も必要なときがかならず来るはずだ、と思って、手放せない。
募金することがいいことだというのはわかるのだけど、どうしても、わたし1人がもたらす小さな小さな変化よりも、自分のことを考えている。(しないことが悪いことだというわけではないけど。)
それに、普段から、ファミレスに来て募金をして帰っていく人なんて今まで見たことがなかった。わたしもしたことがなかったし、募金箱があるとあうことすらも、忘れてしまっていた。
でも、お客さんが30円を募金してくれたおかげで、思い出した。
あの人にとっては「たかが30円」だったのかもしれないけど、わたしは今日ずっと、ぼんやりと嬉しかった。