秋、妄想の季節です。 | ジャポニカ自由帳。

秋、妄想の季節です。

公園のベンチに、誰もいない。
ベンチの後ろには赤く色づいた楓の木。
そこに、マフラーを巻いた女の子がやって来る。
ipodで音楽を聴いていて
手には重そうな、分厚い本と
あたたかそうなコーヒー、コーヒーは使い捨ての容器だ。
ベンチのホコリを払って
座って、本を開く
ゆっくりと。
音楽を聴きながらの読書には、ぼくは否定的だ。
でも彼女は違うみたいだ、とても心地よさそう。
でも
マフラーを下唇のあたりまで持って来て、ちょっと寒そう。
ときたま
コーヒーを口運ぶが
目線はずっと本のままだ。
何を読んでるんだろう、とても気になる。
しばらくして
彼女の頭上の楓から葉っぱが一枚
ひらひらと舞落ちる。
彼女の読んでいる本のページの上に舞落ちる。
とたんに彼女は
イヤフォンを耳から外して「えっなになに?」
上を見上げたり、なんなり。
でもすぐに何かに気づいて、口もとにちょっと笑み。
少し悪戯したつもりだったのに
彼女にとってそれは、ちょっといい感じの、本の「しおり」。
そこに
彼女の彼が登場。
手を振る彼女。
(彼女の)左脇に置かれる本。
右側には彼が。
それから今度は彼とのおしゃべりにとても夢中。
しばらくして
二人は立ち上がり、手をつないで、どこかへ行ってしまう。
ベンチには、本だけが残る(忘れちゃったみたい)。
なにを読んでたんだろう、とても気になる。
それから
風(ぼく)によってめくられる本のページ。
楓の葉の「しおり」が飛ばされて、その次のページが開き
風はやむ。
そこには仲良く手をつなぎ公園を歩くカップルの後ろ姿
が描かれたイラストが描かれている。
本の中の、イラストのカップルが動き出し(歩き出し)
遠くに消えていく。