京都の剣道八段の審査に参加してきました。

参加と言っても、審査は受けていません。いや、受けられなかったのであります。

肩の痛みが取れず、掛かりつけの石垣外科医師には、四月の中頃「無理してはいけません!八月まで待ちなさい!」と止められていたのですが、自分としては、左肩の負傷で二年待ったので、何とかあの舞台に立てないか?と五月一日の審査の朝までもがきもした。しかし、空手六段の石垣先生の武道家としてのアドバイスに従って、よかった!と、今は感謝であります。

 

早速、昨日石垣整形外科院に行きました。

「見取り稽古はどうでしたか?」が第一声でした。

「大いに勉強になりました」

「それはよかった!私はね、あなたのあの気持ちの勢いなら、ひょっとすると、受験されてるかも知れん、と心配してましたよ」と。

「いや!あのまま、あの舞台に立ったら、立っただけで審査の先生方に失礼でした!恥ずかしい思いをするところでした。ありがとうございました!」と熱くお礼を申し上げもした。

「あそうか、その考えでしたか」とのことでした。

それからしばらく、医者と患者の関係を忘れて武道の話に花が咲きもした。

隣の看護士さんが、いらいらしてましたね。

 

先年、恩師堀田国弘先生に「八段は、重さだ」と教えを頂いていましたが、今回、その教えをしみじみと実感させて頂きましたね。

 

審査一日目の前半の受験者が、881人で最終の二次審査合格者は8人でした。勿論、合格された8人の方々のそれまでの修業の深さ、重さには大いに感服しますが、880人の中から8人を選定された審査の先生方の慧眼に感服する次第であります!

それを思うとき、我々受験者は、この受験をもう少し真剣に考え、もうひとひねり、もうふたひねり努力、修業してあの舞台に立たねば、審査の先生方のあの真剣な対応のお姿に実に失礼である!と実感しましたね!

 

人それぞれのお考えはございましょう。

「資格が来たから受けてみよう」「まあ、将来の為に経験しておこう」「ひょっとすると合格するかも知れんから行こう」中には、わが身の実力を過信して、受かるつもりで出かける方もおられましょう!

いや、他人事ではありません!

私の心の中にも、同じ考えはありました!

改めて「恥ずかしい心です!」

 

審査場の二階席から会場を眺めている時、フト!20数年前、「やりきらにゃあ!」と、恩師にお叱りを頂きましたあの声が、そのまま左の耳もとに飛んで来て、思わず「はっ!」としました。そして、「いいか!肩が痛いの、手が痛いのと泣き言を言ってどううる!皆んな、どこかかしこか痛いところは持ってるんだ!それを乗り越え乗り越え修業して、高い山に登ってるんだよ!やる!と決めたら泣き事言うな!やりきらにゃあ!八段は、神の域なんだよ!舐めたらいかん!」と、熱いお叱りも頂きもした。

思わず直立して、一階の審査場に頭を下げました。

 

師に「フン!」と横を向かれないよう「やり切りもそう!」

わが生涯に残る一日でございもした。ハイ!

                       酔天牛 川口 仙次郎