まず最初にバックキャスティングとは何か?ですが、ポイントをあげると「未来のあるべき姿を思い描き、その未来像から現在へと逆算して何をすべきかを考える手法」と言えます

 

その対をなすのが「現在を出発点として未来を探索するシナリオ作成の手法」であるフォーキャスティングになります

 

個人的な感想を言えば、バックキャスティングの難しいところは、計画が長期に亘ることが多いため、計画を策定する時点では、誰も目標を達成できるかどうか確証を持てないこと、取り組み期間中にどのような環境変化や課題が起こるか予め見通せないことでしょう

 

ここではバックキャスティングのさわりの部分だけに触れましたが、もっと詳しく知りたい方はPERSOLが24年7月に出した以下の「バックキャスティングとは?フォアキャスティングとの違いや活用方法を解説」をご覧ください

https://www.persol-group.co.jp/service/business/article/13003/

 

ここでレゴ社の話に行きますがレゴのブロックで遊んだ経験は多くの方がお持ちでしょう

 

レゴ社はデンマークの会社ですが、2015年に「2030年までにレゴ ブロックの素材に石油由来のプラスチックを使うのをやめて持続可能な新素材にする」ことを公表し、研究開発費用 1.55億ドル(約225億円)を計上しました

 

このような公表の背景のひとつには、レゴ社の基幹商品であるレゴブロックがABSという石油由来のプラスチックを使っており、その原料調達を有利にするために石油大手のロイヤル・ダッチ・シェルと提携関係を結んでいたことが、環境保護団体グリーンピースからキャンペーン行動を受けるなど批判されていたためと言われています

 

2021年にはABS代替として、リサイクルされたペットボトルを原料とする試作品のレゴブロックを開発したと発表しました。発表によると、プロトタイプ完成にあたり250種類以上のPET素材と他のプラスチック数百種類の配合をテストしたとのこと。その結果、1リットルのペットボトル1本から、突起2個×4列のレゴブロック約10個分の原料が試作されたそうです

 

ところが、2023年9月にレゴ社は再生PETをレゴブロックに使用する開発をストップしました。断念する主な理由としては ①再生PETではABSの強度が得られないこと ②再生PETを使用するため設備を更新するとライフサイクルでの二酸化炭素排出量が増加すること をあげていました。レゴ社の果敢な挑戦は素晴らしかったのですが、残念ながら失敗に終わったと言えるでしょう

 

一方で、レゴ社の環境取り組みはこの1点だけで否定されるものではありません。同社は2020年までに自社で消費する以上の電力を、自社で開発した再生可能エネルギーで発電するという目標を立てていましたが、2017年5月に3年前倒しでその目標を達成しています。また、2023年には、グローバルベースで、2032年までにGHG排出量を37%削減し、2050年までにネット・ゼロを達成する目標を掲げ、全従業員を対象にしたKPIも設定しているようです。同社のKPIに関心のある方は、英語になりますが以下のURLをご覧ください。従業員の出張にまでメスを入れていることがわかります

https://sustainablebrands.com/read/org-governance/lego-employee-pay-linked-climate-goals

 

このように、レゴ社がプラスチック削減、再生エネルギー、GHG排出量削減で採用したバックキャスティングの手法は1970年代にアメリカの物理学者エイモリー・ロビンス氏が「backwards-looking analysis」という言葉を使い、それに対してカナダの環境資源研究者ジョン・ロビンソン氏が1982年に「backcasting」という言葉を提唱したのがスタートと言われるまだまだ新しい概念です

 

新しい概念ですが、バックキャスティングは気候変動や脱炭素など、後戻りができない重要な地球環境問題に多用されています。従来型のフォアキャスティングとも対比の上、各々の強み・弱みを研究することも重要なことと言えるでしょう