帰り道 | Risk one's life

Risk one's life

握った拳は、誰かの幸せのために、使い続けます。



長い長い2日間を終え、
ヘトヘトになりながら
私はようやく最寄り駅にたどり着いた。








人混みの中を流れに沿うように家に向かって歩いていた。
















そのとき
私の耳を弱々しく細々とした声が
通りすぎていった。































!?











なんだ…今の













周りの人は歩き続けている。
















私は歩くのをやめ、
うしろを振り返った。

















そこには
一人の黒人の男が私を見つめていた。








目の上に黒紫色の大きな痣。





やせている。




















「どうしました?」
















男はおどおどしている。





そして、弱々しく口を開いた。
















「ァァ…ワタシ、ァァ…フ、フツカナニモタベテナイ。ァァ…ゴ、ゴヒャクエンクダサイ…。」


おぼつかない日本語で男はそう言った。

















「それはできないな。」





私は家の方に歩き出した。






「ァァ…」

小さく声がこぼれるのが聞こえた。


























真夜中。
外は寒かった。







私は冷たくなった手を隠すように
ポケットに手を入れた。



















ポケットの中には
1000円札と少しの小銭が入っていた。









私はまた歩くのをやめた。














そして自販機でコーンポタージュを買って
男のもと走った。













コーンポタージュを差し出す。








男はゆっくり手を伸ばす。

片手が缶にふれた瞬間
男はほそく笑い両手で缶を握りしめた。





それをみて私は微笑んだ。




「アリガトゴザイマス。」










そして私はポケットに手を入れ
1000円札を取り出し男に渡した。












「タスカリマス。」




男は目に涙をためてそう言った。
















「風邪、引かないように。」



私はそう言って家へ歩き出した。


















彼が嘘をついてるか、ついてないかなんて
私にはわからない。



彼の名前も、どこの国から来たのかも、何しに日本にいるのかも、年齢も、
何もわからない。







一つわかるとしたら
私よりも彼は困っていた。


という事ぐらいだろうか。












なら、彼を助けない理由はない。










もしかしたら
片言の日本語も、涙も
演技かもしれない。

















それでもいいと思ってる。





あのとき私が彼を助けたいって思った気持ちは本当だから。