「ステレオタイプなショパン演奏があまりにも多い。もっと自分自身の視点を持つべきです」と語るマルティン・ガルシア・ガルシア(東京港区のファツィオリ・ショールームで)=松本良一撮影

 

ショパン国際ピアノコンクール3位

 

 スペインの新星で25歳のピアニスト、マルティン・ガルシア

・ガルシアは、昨年開かれたショパン国際ピアノ・コンクールで

3位に入賞した。

 

もっとも、順位はもはや関係ない。そう思わせるほど異彩を放つ、

ダイナミックな演奏の魅力に迫った。(松本良一)

 

 「ショパン・コンクールを機に、まるでコインの裏が表に

なったように人生がくるりと変わった」。

 

今年6月に初来日を果たし、リサイタルに協奏曲にと引っ張りだこ。「舞台に出る時は作曲家への尊敬の気持ちがすべて」と話す。

ただし、「作曲家への特別な感情はない」とも言う。

 

「音楽への愛は感情移入ではなく、建築物を精密に観察するような

楽曲分析を通して生まれるもの。作品への安易な同化は危険です」

 

 そのショパン演奏は、典型的なショパンのスタイル

とはかなり異なる。強弱の振幅が大きく、大胆なテンポや

フレージング(歌い回し)多用する。

「『典型的なスタイル』とは何を指すのでしょう? 

 

皆、他人の演奏ばかり気にして、実体のない空虚な様式を

作り出している。僕はあくまで楽譜に

書いてあることを信じます」と断言する。

 

 15歳から8年間、マドリードの音楽学校でその大切さを学んだと話す。演奏は自由奔放なようで、実はきめ細かい分析の積み重ねと独自のインスピレーションから成り立っている。

2小節ごとに区切り分析

 楽譜に忠実な演奏と語るが、その実践法は独特だ。「ただ音符を

なぞるだけではダメです。練習する時は楽譜を2小節ごとに区切り、

徹底的に細部を分析しながら読み進める。

すると五線譜に書かれていない微妙なニュアンスが

浮かび上がってきます」

 

 それが楽譜に忠実なのかという問いにも、「もちろん!」と言い切る。「ショパンは特異な感覚を持った唯一無二の芸術家でした。

その音楽を演奏する時は、他人のマネではなく、自分の音楽的

本分に従うべきです。それこそが『楽譜に忠実』な演奏です」

 

 6月来日時のリサイタルのアンコールで、母国の作曲家モンポウの

小品を弾いた。その鮮やかな色合いと物憂げな息遣いは本当に

独特だった。「そう感じ取ってもらえれば最高です。

他の誰でもない僕が弾いているのですから」

 

スペイン、ヒホン生まれ。ナタリア・マズーンとイリヤ・ゴルド

ファーブに師事。レイナ・ソフィア音楽学校を卒業、

ソフィア王妃から最優秀学生賞を受ける。


2021年クリーブランド国際ピアノコンクールで優勝、

同年第18回ショパン・コンクールで第3位と最優秀

協奏曲特別賞を受賞。


その後ヨーロッパ、アメリカでコンサートツアーを開催。
´22年5月、初来日。10公演のツアーを行う。

同年10月、11月にも来日し、サントリーホールのデビューリサイタルを開催、満員の聴衆を魅了した。


´23年6月、7月来日、8公演リサイタルの他、7公演のコンチェルト(ハンブルク交響楽団、NHK交響楽団、神奈川フィル)で、

いずれも好評を博している。

 

MARTÍN GARCÍA GARCÍA – final round (18th Chopin Competition, Warsaw)

 

Sonata "Appassionata" Op. 57 Nº 23 - L. Beethoven.

 

Martín García García: Schumann, 3 Fantasiestücke op. 111 no.2 Fazioli Pianoforti

 

Martin Garcia Garcia Besame mucho