3度にわたるグラミー賞受賞ヴァイオリニストである
ヒラリー・ハーンは、明快で華麗な演奏、
非常に幅広いレパートリーに対する自然体の解釈、そして、
ファンとの一体感ある結び付きにより、名声を博している。
ハーンは、創造性に富む音楽作りへのアプローチと、世界中の人々と
音楽的体験をシェアするための熱心な取り組みにより、
多くのファンに愛されている。
最近では、「100日間の練習(100 Days of Practice)」という
インスタグラム・プロジェクトを立ち上げ、自身が練習している
様子を撮影した動画を100日間連続で投稿した。
このように舞台裏での練習をファンに公開することは、これまで
彼女とファンとの間にあった、音楽の創作過程における垣根を
取り払うことを目的としている。
2018/19シーズンは、これまでの音楽キャリア全体を繋いできた
1本の糸(バッハ)に重点的に取り組んだ。
10月には、バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ
第1番、ソナタ第1番、第2番を収録したCDをリリースした。
これは、ハーンがわずか17歳の時にリリースした最初のアルバム
「ヒラリー・ハーン・プレイズ・バッハ」から20年の歳月を経て
再びリリースされた、ファンおよび批評家待望のアルバムである。
さらに、秋から春まで、バッハの無伴奏ヴァイオリン作品の
リサイタルを、ウィーン、パリ、ニューヨーク、ワシントンDC、
サンフランシスコ、トロント、東京、ソウル、ベルリン、ロンドン、
ミュンヘンで行った。
また、2018/19シーズンは、フランス放送フィルのアーティスト
・イン・レジデンスを務めた。同楽団との共演では、オーストリア、
ドイツ、フランス、スペインでシベリウスを演奏した他、
エイノユハニ・ラウタヴァーラ(1928-2016)の最後の
ヴァイオリン協奏曲の世界初演を行った。
この協奏曲は、ラウタヴァーラがハーンのために作曲した
ものであるが、未完だったためラウタヴァーラの死後、
カレヴィ・アホによって完成された。
バッハは、最初の師匠クララ・ベルコヴィチの下で音楽の勉強を
開始した頃から、常にハーンの人生の一部となってきた。
10歳の時に、フィラデルフィアのカーティス音楽院へ入学した。
ここで、ウジェーヌ・イザイとエフレム・ジンバリストの
弟子だった、ヤッシャ・ブロツキーに師事したが、ブロツキーは
ハーンのレッスンの一部を、ほぼ毎回、バッハの無伴奏曲に充てた。
ハーンは、バッハのパルティータやソナタの何楽章かを、しばしば
彼女の無料コンサート(時にはサプライズ・コンサートの
こともある)のプログラムに組み込んでいる。
こうした無料コンサートは、編み物サークル、地域のダンス
・ワークショップ、ヨガ・グループ、美術の学生、赤ちゃん連れの
親たちを対象に行っているものである。
また、ハーンは近年の自身の滞在地、ウィーン、シアトル、リヨン、
フィラデルフィアなどでも、こうしたミニ・コンサートを生活の
一部に組み入れており、今シーズンはフランス放送
フィルでも引き続き行う予定である。
こうした活動は、音楽愛好家がコンサート・ホールの外でも
ライヴ演奏に興味を持つことを奨励し、親と幼い子供たちが
一緒にライヴ演奏を楽しめる機会を提供するためのものである。
ハーンはファンとの繋がりを作る、天賦の才能に恵まれている
ことで知られている。その才能の一端は、ファンから集めた
アート作品や、自身のユーチューブ・チャンネルのインタビュー
・シリーズ(youtube.com/hilaryhahnvideos)、さらには、
彼女のヴァイオリン・ケースが、コンサート・ヴァイオリニスト
であるハーンの生活についてコメントする、
ツイッターとインスタグラムのアカウント(@violincase)にも
垣間見える。彼女の好奇心は音楽の領域をはるかに超えている。
かつてはブロガーの先駆けとして、自身のウェブサイト(hilaryhahn.com)でファンに宛てて「旅先からの絵葉書
(postcards from the road)」と題した記事を投稿したり、
主流メディアに記事を投稿したりしていた。
1年のサバティカル休暇からの復帰作であると同時に、ドイツ
・グラモフォンへの6年振りの新作となるアルバム「パリ」を
今年1月にリリース。
彼女のために書かれたエイノユハニ・ラウタヴァーラによる
「2つのセレナード」の世界初演録音の他、エルネスト
・ショーソンの「詩曲」、1923年パリ都で初演されたセルゲイ
・プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲の第1番を収録している。
ヒラリー・ハーンは、J.B. ヴィヨーム1864年製作のヴァイオリン
を使用している。
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