こんばんは。

ミステリ案内人・稲葉の白兎です。

松本清張はホラーだ!

どう思います?

ミステリーとホラーはご近所さんなんで、
そんなに意外でもないし、
わざわざ言うほどのことではないですが。

例えば
推理作家の
江戸川乱歩や横溝正史の作品は
ホラー要素たっぷりですしね。

同じ社会派の森村誠一氏の
初期の短編なんかは
ホラーまがいのものが多かったです。

でも改めて
松本清張の作品は、
後半部分がホラーだな、
と思うことたびたびです。

メジャーな作品で言うと、

映画にもなっている
『告訴せず』

これは、有名作品
『黒革の手帳』『わるいやつら』
『けものみち』

と一緒、勧善懲悪四部作。

出発点が悪い主人公は、
最終的に
「倍返しだ!」と
不幸の倍返しされます。

その十倍返しが怖いです。

黒革の手帳は、
映像化率が半端ない人気作品ですが、

悪い主人公なんだけども
感情移入できます。

ひょっとしたら、
上手くいくんちゃう?

期待半分あるわけです。

下巻から雲行きが怪しくなります。

でもこのピンチ乗り越えて、
後は真人間になろうよ、
と主人公を応援。

あと一回上手く行ったら
そろそろ引き返そうよ

そのあと一回が長く、
天候は回復せず、
打ち止めとなります。

予想もしない恐怖の包囲網。

カチカチ山の狸さんみたい。

泥の船に沈められて
ちょっとやり過ぎかも、
怖いよう〜。

その復讐劇がホラーっぽいです。

『けものみち』も
悪い女主人公。

でも黒革の手帳のヒロインに比べ
感情移入しづらい。
無為無策と言うか、
行き当たりばったりと言うか、
なんか受け身過ぎるかな。

この人もいい加減なところで
辞めておけばいいのに、
欲を出しすぎ。

そして、まさかの裏切り。

ええーって感じでしたよ。
ホラーですね。

次は『告訴せず』。

これは男が主人公ですが、
やっぱり出発点がよろしくないんですわ。

選挙資金の拐帯ですからね。

身の程知らずのバカ男です。

これの復讐が
一番怖かったし、

上手くいく可能性が
あまり想像できませんでした。

とにかくホラーとしか言いようがない。

先日読んだばかりの
『湖底の光芒』も
上記の作品と似たところがあります。

悪い奴は助からない(笑)。

一番怖かったシーンが
湖底に沈むレンズの山。

大手カメラメーカーの
レンズの下請けをやっている有象無象の
小さな会社が
彼らの一方的な都合で、
納期寸前で取引中止にあい、
行き場を失った大量のレンズが

諏訪湖に捨てられるという‥。

クライマックスは、
その下請けいじめをしてきた悪い専務が
諏訪湖に沈んだ瞬間、
そのレンズを見るというもの。

元々清張氏が、
その下請けレンズメーカーの
残酷物語を人伝に聞いて、



これを題材に小説にしたわけです。

まるでドラマ半沢直樹で、半澤の首を吊ったお父さんのエピソードを彷彿とさせます。

大雑把に言うと、
過半数のフィクションが
こういった、背筋が凍るような作品が多いですね。