こんばんは。

ミステリー案内の稲葉の白兎です。

小倉の松本清張記念館に行ってきました。

だからなのか、
「野盗伝奇」に続いて

『湖底の光芒』を昨日から読み始め
意外なラストに天を仰ぐというか、
感無量。

読み始めはビックリしましたよ。

だって、先週から始まったばかりの
TBSドラマ
『半沢直樹』を彷彿とさせるんですもの。

彷彿という言葉よりは、
シンクロニシティのほうがピタッとくるかな。

見たばかりのドラマと似てるんですから。

湖底の光芒は、
松本清張にしては無名の作品なんですが、
そもそも長いこと文庫化されてなかったので。

なんと1963年の東京オリンピックより前に書かれた作品。

ですから、さすがの稲葉の白兎めも、
なかなか手に入らなかったため、
読めずにいました。

これは去年の今頃
横浜の港の見える丘公園の
文学記念館で、

松本清張特集をやった時に
手に入れた作品。

この日は、この作品以外に『地の指』など
さまざまな清張センセ関連作品を購入したため、
読むのが一番後回しになってしまいました。

有り体に言うと
放置なんですが(笑)。

何はともかく、「野盗伝奇」を読んだ勢いで、この長編も一気に読み上げました。

最初の数ページで、
「なんじゃー、こりゃーー!」です。

悪い意味じゃないです。

前日見たばかりの
「半沢直樹」と酷似してたので。

何しろ、いきなり
企業詐欺倒産の話ですからね!!

詐欺の匂いぷんぷんで。

半沢でも、松也演じるスパイラルの若き社長がもう少しで会社を乗っ取られるところでしたが、
この『湖底の‥』もまさしく、
乗っ取りや詐欺、偽装倒産、不渡り手形

もう、ミステリーじゃなく
企業小説なんですよ!

経済小説?

債権者会議から始まるんですからね。

エンジンの遅い清張センセにしては
冒頭からフルスロットルですよ。

半澤見た直後だから
余計に面白く感じたのですね。

舞台は銀行じゃありません。

なんと、カメラ業界。

大手カメラメーカーの下請けの
レンズ屋さんが主人公。

場所は諏訪とか岡谷。
松本も出てきましたね。

長野県ですね。

昔から、光学・精密機器のメッカだったらしいですね。

高原をもじってハイランド光学とか、
社名も、面白いです。

ラビット光学が出てきた時は
のけぞりそうになりました。

カメラ業界ぽくない社名だし、
清張センセらしくないネーミングだと思いました。

『告訴せず』『わるいやつら』
『黒革の手帳』と同じ匂い。

ドロドロ

ギラギラ。

もうやめられません!!

60年代に書かれたにしては、
古くないんです。

ヒロインは考えが古すぎて
イライラしましたが。
古風ってやつです。

この若く綺麗で慎ましい女未亡人社長が、
変なやつらの餌食になりそうでハラハラするんです。

でも途中で、

長年の付き合いで
清張センセの考えはお見通しなので、

この主人公は、恐らく酷い目に遭わないと確信しました。

これが中年女か、
性悪女なら別ですが、

慎ましい若い、しかも綺麗とくれば、
清張先生は絶対に悪いようにはしないのです。(笑)

もう、これは鉄板です。

これが中年のオッサンだったら、
もうおしまいです。

おしまいdeath!!

理不尽100連発。

まー、そんなことはどーでもよろしい。

死ぬのは奴らだ

これは悪い奴が酷い目に遭う話に違いない。

倍返しだ

いや、十倍返しだ。

半沢のような胸の空くような活躍をする人間は
現れないのですが

因果応報の10倍返し。

いやいや、そんなことすら
どーでもよくて、

この作品の肝は
タイトルにあるのです!

湖底の光芒

この意味がわかったのは、
最終ページ近く。

この表紙を見てください。
何気ない水色の模様。

読み終わったら、この表紙にも
ゾクッとするものを感じるのです。

レンズ業界です。

湖底は、文字通り湖の底。

諏訪湖の底には、
納品寸前のレンズがキャンセルにあって、泣く泣く廃棄したそのレンズがすごい単位で埋まっているらしいのです。

大手メーカーが下請けを泣かせる話。

倒産したり、
首を吊ったり‥

この作品の裏主人公は、
その悪辣な大手メーカーの専務。

彼個人というより、
そのカメラ業界の裏社会の横暴が
よほど怖い。

さすがは松本清張。

完全な作り話だけでも無さそうです。

全くこれと関係ない作品で
『犯罪広告』という中編がありますが、
最後に海ホタルが出てきます。

実にゾッとしましたが、

この作品もそんな感じで、
最後はゾッとします。

予想もしない結末。

ちょっと喋りすぎましたが、
業界のハナシにドキドキハラハラしました。

小さな下請けってヤバイなあ。

下請け残酷物語。

登場人物の描写はいただけないけど、
経済サスペンスとメロドラマが上手く融合してます。