こんばんは。

ミステリー案内の稲葉の白兎です。

こないだ舞台「八つ墓村」を新橋演舞場で
観劇して、

後で「犬神家の一族」も新派公演でやったと聞き、
興味が湧きました。

八つ墓村の舞台化でもビックリなのに。

当然、あの有名なスケキヨのゴムマスクや
湖面のV字開脚が出てきたと思われます。

日本一、有名なミステリと言っても過言ではないですね。

ミステリーを普段読まない人も、

犬神家のあのシーンとマスクは
見たり聞いたりしてるはず。

怖いというよりも、
笑いでしかない。

怖いのはむしろ菊人形の生首とか、

青沼菊乃のリンチシーンとか、

佐智の殺害シーンのほうがよっぽど怖い。

ゴムマスクは滑稽。
こんな人みたら、
絶対、おかしいと思う。

本当に火傷だとしても、
もう少し目立たないモノにするか、

帽子やサングランスにするとか、

ジャビットみたいな
ぬいぐるみをかぶるとか、ね

すると思うんですよ。

逆さ足ニョッキリは、
初めてみた時は
わけがわからなかったです。

ヨキという駄洒落(見立て)

殺人者と死体遺棄者が別人で、
真犯人には無理と思わせる、
嫌疑をかけさせないためのトリックというのは、
後でわかりましたが、

どうも映像だけが一人歩きして、

そこまでわかってる人は
少ないと思われます。

私は横溝正史の犬神家は、
面白いとは思いますが、
好き嫌いで言ったら、

八つ墓村
悪魔が来たりて笛を吹く

よりは、感情の揺さぶりは
少なめ。

遺言状モノでは
随一だと思います。
こんなヘンテコで精巧な遺言状は唯一無二。

よく考えたなぁ。

海外傑作「Yの悲劇」にも女主人の考えた
歪んだ遺言状が出てきますが、
全然まともです。
少なくとも、1人の相続人を擁護しているのが
明らかなので。

でも犬神佐兵衛の遺言状は、
誰を幸せにするとか、
そういう目的が全く感じられない。

皆さん、泥仕合をやってください、
と言ってるように聞こえます。

金をサカナに憎しみあえ
みたいな。



原作を読んで
気になるのが不遇な青沼菊乃親子で、

最後までこの親子に救いがなかったのが
どうしても引っかかってしまいました。

静馬がいっそ悪人だったらいいのですが

ちょっと中途半端というか、
あれだけのことをされたら復讐とか
考えてもおかしくないし、
戦争でも犠牲を払ってます。

舞台版で「浄化」されてるといいですが。

ドロドロ横溝といえば、
最高峰が
「悪魔が来たりて笛を吹く」。

横溝正史といえば
血筋。

出生の秘密。
不義の子
近親相姦。

その最たるものが
「悪魔が来たりて笛を吹く」。

お屋敷の筆頭人・椿英輔子爵は、
犯人のことを「悪魔」と表現していました。

それはいくらなんでも言い過ぎ!!

音楽家でもあるので、
その「悪魔」のことをフルートの演奏で、
曲まで作りました。

映画ではないですが、

テレビの連ドラ化されたものが
めちゃくちゃ面白く、
前半と後半では
だいぶ雰囲気が変わってしまいましたが、

悲しいお話であります。

80パーセントくらいは、
犯人に同情してもいいかな。

椿家で死ぬ被害者が
可哀想とか一切なかったですね(笑)。

それぐらいエモーショナルにならざるをえません。

横溝正史の話が現代でも色あせないのは、

人間のドロドロを描いてるからかもしれません。

どんなに時代が進んでも
人間の感情、情念は変わらない。

だから共感者も多いし
たびたびリメイクされます。

松本清張センセも
ドロドロの天才。

だから毎年、映像化されます。