こんばんは。

ミステリー案内の稲葉の白兎です。

昨日、行った舞台「八つ墓村」は
衝撃の連続でした。

どうやって舞台化するのか?

本格推理かつ、
スペクタクル。

鍾乳洞迷路に
多治見屋敷に

過去の落武者伝説と、
多治見要蔵による32人殺し。

何しろ、本格推理物の割に、

過去にスリップ

コロコロ変わる現場

場面転換が多いのです。

こちらの杞憂をよそに
なんとかなってました。

周り舞台、どんでん返し、

豊富な場面転換。

それも満足できる大道具と小道具。

これはかなりお得感あり。

休憩までの前半は
ほぼ原作どおりの内容で

いやあ、驚きです。

多治見要蔵の演技が良かったんで、
誰が演じたのかなあと
プログラムを見たら、

なんと!

金田一耕助役の1人二役。

ではなくて、
1人三役!!

多治見久弥の役もやっていた!

コレ、絶対に気がつきませんよ。

3人とも違う人がやってるように見えます。

考えてみたら
この3人は、物語上、同時に出ることはなく、

三役が全然可能なのです!

石倉三郎は出番が少ないのに、
お巡りさんだけ。
アンタも被害者か、回想シーンの何かに出ればいいのに。

1人三役は、決して人手不足だからでは
ありません(笑)

舞台にはエキストラを始め、
たくさんの人が出てました。

本格推理モノの割には端折られた登場人物も少なく、
光善と英泉くらい。

一番驚いたのは
小竹ばあさんが死ななかったこと。

8つの項目
医者、馬喰、分限者、尼、坊主
娘、跡取り、双子

双子は小竹と小梅

医者は他所から来た新参者で評判の良い新井先生と前からいて、ヤブだと噂の久野先生

博労ばくろうは、
荒くれの吉蔵と辰弥の祖父井川丑松

尼は
濃茶の尼と梅幸

などといった具合に
村で、対になつている2人のうちのどちらか一つに赤線かばつ印が付いて
殺害現場にそのメモが落ちているのです。

これが画期的な犯人の発明。

本当の目的を隠すために
敢えて不必要な項目を作っています。

八つ墓村の総領
多治見家を根絶やしにする犯人の計画。

しかし、
この項目のメモを作ったのは、
犯人じゃありません。

最初の原作者は医者の久野恒美でした。

村のもう1人の医者・新井先生が憎くて憎くてしょうがない。

この人が村に来てから
患者を取られ、評判も悪くなりました。

でも新井先生を殺したら
疑われるのは商売敵の自分です。

医者以外に項目をたくさん作って
ちょうど8項目つくりました。

八つ墓村大明神を妄信してる
気の狂った人の犯行に見せようとしました。

しかも、久野先生
実行に移す気はなし。

ただこのメモを見て、
お酒が美味しく飲めればくらいに
考えていました。

机上の空論です。

ですが、
このメモを偶然手に入れた人物は
その項目を見てビックリです。

なんと多治見家の人が全員
入っていたからです。

そいつは多治見家の一族を鬱陶しく
思っていただけではなく、

上手くすれば、

遠い縁から、
多治見家の莫大な遺産を相続できるかもしれないからです。

この双子という項目に小竹と小梅が入っていました。

この老婆たちは多治見家を牛耳っていました。

ところが!
この舞台では、
双子の片割れは殺されませんでした。

大団円では2人ともピンピンしてたので
驚きました。

舞台演出家
あるいは脚本家のオリジナル解釈ですね。

考えてみたら
双子の老婆を殺す必要なんてないですよね。

かなりの高齢です。
60や70の老婆ではありません。

相続者の資格は無いというか、
遅かれ早かれ自然消滅する運命。

それは長男の持病持ちの多治見久弥も同じこと。

長女の
春代だって体が弱いし
結婚も無理。
大人しい性格です。

人畜無害と言えます。

そこへ現れた突然の後継者
寺田辰弥。

まあ、よくある隠し子みたいなもんです。

多治見家の財産を狙っていた者は焦ります。

あの手この手で追い返そうとします。

いやあ、犯人、
アタマいいようで悪いですね。

辰弥を殺すか、
来れなくさせるか
いくらでも方法はあるのに、

5人も6人も殺すなんて
おかしすぎます。

そうそう、
この舞台版の辰弥は
最後、ちゃーんと多治見家の跡を継ぐのです。

原作に不満のある脚本家が
直したんでしょうね。

多治見家の総領・多治見要蔵の32人殺しも
遺産相続騒ぎも
元はと言えば

双子の老婆が諸悪の根源ですね。

この老婆たちの手段の選ばなさには
ゾッとするものがあります。

封建的にも程がある。

こういうドロドロした物語は
やはり芝居、とりわけ舞台にうってつけだということです。

双子はやはりミステリーに最適。

殺人計画を立てた者と
実行者が別にいるのは

「Yの悲劇」みたいです。

さしづめ
久野先生の悲劇?

先生にもかなり落ち度があるんで
こういうのは悲劇とは言いませんね。