こんばんは。ミステリ案内の稲葉の白兎です。
世界最長記録の本格ミステリ
「人狼城の恐怖」は、
ほんとに長いです。
どれだけ長いかと言うと、
普通の、やや厚めの文庫本が
4冊分。
実際、4冊にわかれています。
1冊目がドイツ編、2冊目がフランス編。
ドイツ編はドイツの人狼城で事件が起こり、
フランス編はフランスの人狼城で事件が起こります。
ドイツ編に出てくるのは、ドイツ国内観光をする懸賞旅行に当たったドイツ人の老若男女10人。
この団体には、他にツアーコンダクターや、人狼城のメイドも混ざっています。
主人公は、テオドールというドイツ人青年で音楽家。独身。
ツアーは、ローレライ・ロックで有名なライン川下りから始まります。観光描写は、リアリティがあって楽しいです。
ツアー客は、年の離れた金持ちの夫婦や、二流の女優や、老歴史学者などバラエティに富んでます。
フランスの国境近くザールブリュッケンが最後の観光地となり、その後は人狼城に宿泊します。
目の前には、もう一つソックリの城が向かい側に見えて、
それが双子の片方の城であり、対をなすフランスの青の狼城です。
驚くべきは、城主が留守にしており、最後まで姿を見せなかったことです。
彼らの面倒を見たのは主に使用人です。
奥方は大変な美人でしたが、体が弱く、かなりスタッフ任せなところがありました。
ツアーの主催者と城主の繋がりが今一つ不明確で、観光ツアーの面々は騙されたように感じイライラします。
来るはずのオーケストラも到着しません。
この選ばれし国内ツアー客は、
全員が見知らぬ同士。
観光の時は平和でしたが、
城での滞在時に喧嘩したり、疑ったり‥
本当に自分勝手な人もいます。
不可解な連続殺人が勃発し、
人々は疑心暗鬼の極みに達します。
帰りたくても帰れまテン。
なぜなら、送迎車は皆帰ってしまい、
城の門は外側から何者かによって鍵がかけられ、
ある種広い密室状態となります。
外界と全く連絡が取れません。
電話も無エ、電気も無エ、
伯爵は帰らねエ、
狼煙をあげようとしても、
そもそも孤立した森の崖に立つ城は誰からも発見されません。
唯一の希望は、隣の青の狼城。
果たして、SOSは届くのか⁈
そしてフランス編は、
ドイツとの国境に近いアルザス地方の話。
高級会員制クラブ「アルザス独立サロン」のメンバーが
スポンサーである青の狼城の表敬訪問が決まります。
メンバーを編成したのは主人公のローラント・ゲルケン弁護士の叔父。
実はこの中には警察官が混ざっています。
ローラントの親友である検事補がとある事件を追及しています。
青の狼城の城主に脱税疑惑がかかり、内部調査に行った職員が2人、行方不明に。
人狼城で命を落とした可能性があるということで
その調査をローラントに依頼。
もう一つはナチスの負の遺産・アストラル兵士の始末。
死者から死者へと渡り歩く人狼は、
今まで様々な体をのっとって
生きながらえてきたが、
アルザス独立サロンの老会員に取り憑き、
さらに表敬訪問のメンバーに乗り換えた様子。
誰に取り付いたのか見破って、
危険な人狼を始末しなくてはなりません。
それに関してはサロモン警部をニセ会員に仕立て上げ、ローラントと共に人狼城へ派遣します。
ローラントは、承知したものの
皆、5人は昔から知ってる旧知の仲間です。
戸惑いを隠しきれません。
人狼城へ到着しますが、
伯爵は留守でした。奥方とその弟や息子やスタッフが出迎えます。
ワイン蔵見学でローラントは
何者かに命を狙われ、襲われます。
金持ちの若い未亡人
老歴史教師
皮膚科医師
レストラン経営者
犯人はこの中に混じってました。
サロモン警部が指摘します。
実はローラントは間違いで襲われ、
犯人の狙いはワイン蔵の親方でした。
親方はナチスの収容所で働いていました。
独立サロンのメンバーにかつて知った顔を見かけ、話しかけたのが運の尽きでした。
犯人は元ゲシュタポで正体がバレたら、
会員でいられなくなります。
そこで親方を、始末しようとしたのです。
しかし、
青の狼城で、彼もまた、
正体の知れぬ殺人鬼によって、
手足と首をバラバラに斬られた死体となってしまいました。
城に閉じ込められた彼らは必死になって
通信手段を講じますが、
全部うまく行きません。
余興で来るはずのオーケストラも、到着しませんでした。
向かい側に見えるドイツの銀の狼城は、
人がいるのか、いないのか??