こんばんは。
ミステリブログを書いております
稲葉の白兎です。
「恐怖」とか「地獄」という言葉を
タイトルに使ってるものほど
大して怖くなかったりしますが、
読んだ人が極端に怖がらないようにという
安全弁なんでしょう。
二階堂黎人「人狼城の恐怖」は、
ガチで怖いです。
フランス編の人狼城は、
人狼にも怖がらないといけないし、
連続殺人犯にも怖がらないといけない。
八つ墓村でいうと、
落ち武者の祟りにも怖がらないといけないし、
連続殺人犯にも怖がらないといけない(笑)
むろん、両方とも本格推理小説なので、
人狼にせよ、落ち武者の祟りにせよ、
無視していいんですが、
途中で、
人狼=連続殺人犯
ではないかと思ってしまう箇所もあり、
そこはトリックが存在してますが。
人狼城の怖いところは、
話が後半になると、
恐怖が加速するところです。
10人くらいの
「人狼城」に呼ばれた招待客が
次から次へと正体不明の殺人鬼の
毒牙にかかり死にます。
人狼城の伝説は大して怖くないです。
怖いのはやっぱり現実に
拳銃とか石弓とかの凶器を持って
殺し回る犯人です。
城は広いとはいえ、
外部から完全に孤立した密室です。
鍵がかけられた城から逃げられないし、
外から助けも来ません。
味方はどんどん死んでいき、
城のスタッフは明らかに怪しいのですが、
招待客は
一人、また一人と殺されていきます。
絶望小説?
13日の金曜日やなんかは
最後の一人は助かりますが、
この「人狼城」では、
最後の一人が助かった気配がありません。
ドイツ編も
同じく、一人また一人と
なすすべもなく、殺されて
最後はたった一人に。
その一人さえも、無事に済んだ感じがしません。
大怪我をし、
さらに複数の追っ手が来るところでジ・エンド。
何なんだ、一体⁈
城のスタッフが犯人と無関係なわけはないのですが
城側のスタッフ、オーナー一家さえ、
死体となって出てくるのです。
しかも城側の住人は
大団円になると
まったく姿を見せなくなります。
どちらの城も
連続殺人が起きるのですから、
城側の家族やスタッフ
と
招待客は
険悪になります。
対立します。
最後の一人の犠牲者の絶命シーンは
直接は描かれていませんが
かなりの死闘が繰り広げられています。
この小説は、
招待客は全員
殺されてしまうところで終わっているのです。
え?
犯人は?
犯人は分からずじまい。
理由も分からずじまい。
「事件編」ということです。
真相のある続きは、
別の本を買わなくてはなりません。
フランス編では、
招待客がたった4人になった時、
召使いの入れた紅茶を飲んだ後、
一人だけが死にます。
召使いは、等分に紅茶を入れ、
一切怪しい仕草を見せなかった。
4人のうち、紅茶のカップを手にしたのは3人。
一人は大怪我を負い重体で、
とても紅茶を飲めるような状態ではありません。
3人は砂糖を入れて飲み、
一人だけが苦しみ出して死にました。
同じポットから入れられた紅茶なのに
なぜ一人だけが毒を⁈
犠牲になった人は
自殺ではありません。
生き残った人は
人狼の仕業としか思えないと言いました。
私も、そんなバカな思いつつ、
こうなったら
人狼を信じないわけにいかなくなりました。
考えても考えても結論が出ませんでした。
なぜ〇〇さんだけ殺されたのか?
毒入り紅茶を飲んで生き残ったうちの一人は、
発狂してしまいました。
叫んだり暴れるのではなく、
無気力な廃人になってしまいました。
そして城には
斧を持った甲冑をまとった殺人鬼が現れ、
残りの招待客を追い詰めます。
この毒殺事件はわけがわかりませんでしたが、
別の本の「解決編」で
辻褄の合う真相は用意されてました。
とにかく、
都合4冊からなる「人狼城の恐怖」は、
ドイツ編も
フランス編も
オカルト&ホラー。
どちらかと言えば
オカルト要素が濃いですね。
何でオカルトには強い稲葉の白兎めが
怖いと感じたか?
多分、スプラッタホラーの要素があったからではないかと。
殺される人たちというのは、
首をちょん切られたり、
手足がバラバラになったりしまして、
そういうビジュアルによるところが大きいです。
後半は心理戦で、
いかに冷静でいられるか?
仲間内で疑心暗鬼になったり、
常軌を逸した言動をする人物がいたりで
自分も登場人物になった気分で
恐怖を味わいました。
下手なおばけ屋敷より
この人狼城はヤバイお城です。