こんばんは。

稲葉の白兎です。

松本清張をはじめとするミステリ案内ブログです。


これは、先日松本清張展の近代文学館で
手に入れた本です。

今日はその、パート4です。

昨日は、「帝銀事件」などアメリカGHQの陰謀を暴く「日本の黒い霧」の映像ドキュメント
についてお話ししましたが、

もう一つの映像「火の路」も、
まったく別のジャンルですが、
色んな意味で清張センセらしい作品です。

ゾロアスター教への興味

これは、センセはともかく、一般人の我々で
ゾロアスター教に惹かれる人は少ないと思います。
マイナーな分野ですが、
これがひとたび清張センセの手にかかると、
魅力的な長編小説になってるから不思議です。

私はタイトルマニアでして、
特に清張センセのタイトルのセンスの良さには、
小学生の頃から一目置いておりました。

当時のカッパノベルスの末ページには、
各作家のタイトルのみが紹介されてますが、
タイトルを見ながら、
内容に思いを馳せておりました。

風の視線
生けるパスカル
二重葉脈
黄色い風土
溺れ谷‥
‥‥

意味が不明なこの、なんとも抽象的なタイトルのオンパレードなのです。
だからこそ、想像力が働いたりします。

実際、タイトルに意味はなさそう(笑)。

その中でも特に気に入ったのが
「火の路」ひのみち。

カッコいい!!

なんだか知らないけど。(笑)

 

実に情熱的なタイトルであります。

読んだのはかなり大人になってからなので、
なんとか楽しめました。
良い作品です。

でも、正直、細かいところはムツカシイ。
火の儀式とか、文字とか。暗号とか。

でも、イランの旅のシーンはそれはもう面白いというか、
イランって治安悪イメージで実際悪いけど、
この小説の紀行描写を読むにつけ、

まさかの「イラン、行きたい!」って思うわけですよ。

清張氏の筆にかかると、
中東でも魅力的になるのです。

当時は危険度数は、それほど高くなかったのです。

主人公の前半の旅行のあと、
本題が現れます。

アカデミックな大学教授のウラと表みたいなのが
主題で、
狭い大学のアカデミー界を皮肉ってます。

権力が大嫌いな、センセらしい、

ヒロイン「路子」みちこが素朴でいいですね。


ところで、
清張氏の長編小説って、
ほんとにフィクション?

ドキュメントと虚構が入り混じった、

入り混じったように見える小説が

結構あります。

かなりドキュメントに近いのが
「黒い福音」。
実際あった事件を推理したり、
虚構も混ぜて膨らませています。

闇市があった頃の
スチュワーデス殺人事件で、
容疑者は外国人神父。

読んだあとで、フィクションでないと知り、
ビックリしました。



それから「遠い接近」。

実に素晴らしいタイトルです。
しかも、内容と一致してます。

ある男が復讐を企てるのですが、
その殺人以外は、
妙にリアリティーがあるのです。

清張氏は、30過ぎに兵隊に取られましたが、
その時、「さてはハンドウを回されたな」
と言われます。

これは、懲罰、仕返しの意味があるそうです。
本人の知らないところで。

教練の出席率の悪い人を、
懲らしめる?ためにワザと兵隊に徴収したりするそうです。

つまり、兵隊にそぐわない年齢・体格の人がいると、その係から見ると、
あっ、これはワザと選んだ人だとわかるわけです。

清張センセはその時、30歳を超えていたので、
思わず、係の人から、

「ハンドウを回されたヒト」
と思われたのです。

しかし、係のこの何気ない発言が、
後の「遠い接近」を書かせるキッカケになりました。

ある男が、教練に出られませんでした。
自営なので、出たくても出られないのです。
しかし、そんな事情を、
アチラが知るはずもなく、
目をつけられます。

欠席裁判的な仕返しは、徴兵です。

そこで、男はいじめられ、
挙句、
やっとのことで生還したら、
故郷の家族は空襲とかで亡くなっていた。

自分さえ、兵隊に取られなかったら‥

好きで教練サボったのではないのに、
つまらない意趣返しをされて、
自分をワザと兵隊のメンバーに選んだ男を探し出し、復讐を誓うことに。

とにかく、リアリティーのある、話でした。
軍隊生活の場面なんか特に。
清張氏自身も兵隊生活を送ったわけですしね。

むろん、センセのご家族はご無事でした。