こんばんは。

稲葉の白兎です。

てか昼です。
ごめんなさい。

松本清張「砂の器」は、

原作も映画も不朽の名作です。

普通、原作のあと映像見ると、
ガッカリが多いので、

映像で面白かったから、ついでに原作も読む


というパターンの方が安全だし、自然だと思います。


でも、原作が気に入ったら、
ついでに映像も見ようというのも自然な流れではあります。

そのかわりリスクは大きい。

映像のほうがインパクトありますから、
原作の違いがダイレクトにわかってしまいます。

カットされたエピソードと登場人物。

これは「宿命」です。

時間がどうしたって足りないんですから。

中には原作の原形を留めないものもあります。


そのリスクは覚悟で観ます。

映画の「砂の器」は、
もちろん、上記のような宿命を背負いましたが、

コレはコレ!

原作とは別の
感動がありました。

親子の巡礼の旅は、
もう、泣きますね。

原作には、巡礼なんて出てきません。

骨格は同じです。

想像を絶するつらい過去を断ち切り、
みずから人生を切り開く主人公。

てか犯人なんですけども。

ついに別の人物として生きることに成功した主人公。
栄光のおまけ付き。

そこへ立ちはだかる過去を知る人物。

そいつは、別にゆすったりバカにしたりするわけではない。

そこは、犯人もわかっています。

旧知の恩人で、犯人親子の世話を焼いた
根からの善人。

懐かしいあまり、連絡を取っただけ。
取る権利はあります。

音信不通。
前から気になっていた。

被害者は町の駐在員で、退職しましたが、
心の隅に、突然姿を消した犯人の消息は
気になって、それだけが引っかかってました。

原作と違うのは、
犯人の父親が生きてること。

この違いは、後々めちゃくちゃ大きくなります。

特に犯人の動機の点に影響があります。

原作の被害者・三木謙一は、
人畜無害といったイメージですが、

映画版になりますと、
多少、お節介、強引さが目に付きます。

ことに昨日の2019バージョンは、
配役が高嶋政伸という曲者キャラ俳優ですから、

普通に殺意が湧くわ!!

同情が湧きにくいし、
さして正義感のある良い人にも見えませんでした。
普通に会いたくもないし。

原作を読む限りでは、
犯人は、普通に人間のクズ。

栄光をつかみかけたシンデレラボーイの犯人にとって、
三木は過去の亡霊でしかなかったよう。

しかし、
映像はもっと、動機を掘り下げてます。

社会的地位を築いた犯人にとつて、
単に致命的な過去を知ってるだけでなく、

無理くり父親に会わせようとしました。
善人なだけにタチが悪い。

この時、社会的地位がなければ
ホントにいい人だな、恩人だなと思えますが、

犯人は一種の有名人なわけで、

それは普通にキツイし、
居場所を教えるだけで、
全然十分だと思うのですが。

映像を見ると、
ますます動機に納得できるのです。

他人の親子や夫婦に立ち入ると
ロクなことになりません。

最後の最後で、善人の三木謙一は、
間違った正義というか、
やらかしたかな。

三木に関しては、

普通、会いにいくかなあ。

やっぱり彼のエゴだと思ってしまいます。

自分の存在がどれだけ犯人を不愉快にさせるか、
斟酌してください。

政治家の大物の娘と結婚を控えている身には
癩病の父親うんぬんがなくても、
人間心理として、好まないと思うんですよね。

生きてる世界が違いすぎますし。

たった一ミリの恩着せがましさが、
まさかの殺意を誘発してしまいました。

原作はミステリの要素が濃く、
映像は、犯人の生い立ちを掘り下げ、
動機に深く追求しています。

2019バージョンは、
現場が渋谷。

同じ東急線の始発沿線とはいえ、
蒲田とエライ違い。

俳優で意外とよかったのは、
温水洋一。

犯人役は過去サイテーで、
フジテレビは何を考えてるのか、
清張センセに土下座してほしい。

秀夫の役をやるのは
10年早い。

イケメンがやればいいというものではない。


その点、若き日の田村正和はよかった。

ミステリアスで自己中な感じが犯人にピッタリ。

それと、
この作品は
俳優によほど演技力がないと、
犯人目線で描くのは、

つまり最初から「犯人です」とバラして
描くのは危険かと。

あくまでも刑事目線で、

しかも今回のように刑事にもへんな過去を与えないほうがいい。

正統派ドタ靴びんぼう刑事。

「亀田」に辿り着くのが早いのもNG。

秋田の「亀田」にも行けよ!

刑事、ラクしすぎ。
直感鋭すぎ。

原作の今西刑事は、
三木が立ち寄った映画館の上映映画こだわり、
めちゃくちゃ難儀してますから。

針の穴に糸を通すような、
苦労の連続なのです。

それにしても余計なツッコミですが、
天才ピアニストなら、
三木が面倒見てる時に
すでに頭角を表して、才能の片鱗に気づいてないとおかしいですね。

特に音楽分野って、
才能だけですよ。

秀夫の動静が気になるなら、
そっちの方を当たった方が早く彼に辿り着けたはず。
まして三木は教育者的な要素を持っているので、 
秀夫の才能に気づけないはずないと思うんです。

秀夫については、
犯行しようがしまいが、
バレなかったとしても、

結婚生活が上手くいかないと思います。

素の自分を出さずに
何十年もそばで暮らせますかね。

結局は過去の恋人と同じ運命をたどるのではないでしょうか。

彼は社会的地位を得ることで、
世間に復讐がしたかったんでしょうか?

迫害からのがれ、
別人の戸籍を手に入れ、
芸術家として、頭角を現したなら、

その辺で出世を望まなければよかったのに。

ヌーボーグループの一員として、
テキトーに振舞っておけば、
それなりの幸せを得ましたよ。

このキャラクターは、ほんと深いですね。