こんばんは。
ミステリ案内人・稲葉の白兎です。
大河ドラマ「いだてん」見ていると、
無性に、
本物の大河ドラマが見たくなります。
大河ドラマ=歴史
という設定がずっと続いているので。
別に戦国や幕末や赤穂浪士だけが大河ドラマではなく、
前に一度、
「いのち」という橋田壽賀子の脚本で、
全くの架空の物語をやってました。
主役は三田佳子。
橋田壽賀子は、なんだかんだ、話の起伏に富んでるので、引っ張られやすさはあると思います。
クドカンも主演の勘九郎も嫌いではないけど、
なんか物足りない。
同じことはこないだ放映したばかりの松本清張の2時間スペシャル「疑惑」にも言えます。
私の中の「疑惑」は、
映画の桃井かおりの球磨子です。
そして弁護士の岩下志麻。
あの球磨子だけは、空前絶後です。
黒木華は相手が悪かった。
魔性の女、面白かったけど、
どことなく、お嬢さんぽさ、上品さがラストあたりにチラホラ。
無実にしてもらいながら、
「また、あたしを無罪にしてよ。頼むわよ」
脚本がいいのか、この台本でやったら、
悪女の面目躍如です。
悪女の中の悪女。
実際の事件で、男を次々と毒牙にかけた佳苗被告を思い出します。
写真だと全然不美人だけど、本人がやり手だと、
そんなハンデは、凄みさえ感じます。
今回の失敗はなんといっても米倉涼子がA級戦犯。
アンタ、岩下志麻の佐原弁護士、ちゃんと見たの?
と聞きたい。
米倉涼子がこれほど演技が下手だとは思いもよりませんでした。
下手というか、
その演技をここに持ってくるかな?
殴ってやりたくなるほどのダメ佐原。
奇をてらいすぎ。
場違い。
もうね、桃井かおりバージョンが見たくなった。
岩下志麻、桃井に隠れてたけど、
米倉涼子サマの薄っぺらな演技を見た後では、
あなたはやっぱりすごい!!
と、桃井かおりと同じくらい岩下志麻の佐原弁護士を見たくなります。
まがい物を見せられた後は、
口直しにホンモノを見たいという心理です。
桃井&岩下の「疑惑」って、
改めて名作だったのね。
映画と2時間ドラマを並べるのも可哀想ですが。
演技だけでなく、内容も微妙に違ってましたね。
最後まで球磨子をヤな奴にしとけばよかったのに。
余談ですが、球磨子役、沢口靖子もやったみたいで‥。全く想像がつきません。
人間として常識に欠けたぶっ飛び妖怪キャラ・球磨子を
パリパリとした爽やかな美女・沢口靖子がやるなんて‥こっちも見たいですね。
しまった、今日の本題。
大河ドラマの原作に松本清張を使うのは良いアイデアだと我ながら思います。
「疑惑」は短編です。
映画の印象が強いだけに、原作のボリュームのなさに、めちゃめちゃガッカリしましたっけ。
弁護士が男というだけで、もうアウトでした。
清張の時代劇は面白いです。
特に大長編の「天保図録」。
読み終わった瞬間に、
大河ドラマにしていいんとちゃう?と思いました。
タイトルがつまらな過ぎて、
長いこと読むのが後回しになってた「天保図録」。
でも読み始めたら、
意外と面白かった。
時代は江戸末期。
12代将軍。
3人ほどの主役級の登場人物のうち、
最も有名なのは、
天保の改革でお馴染みの
老中・水野忠邦。
それから悪人で、
「蛮社の獄」で蘭学者を弾圧した鳥居耀蔵。
それから、民間人の悪人も出てきます。
「わるいやつら」とタイトルを付けたくなるほど、悪人が多数出てきます。
鳥居耀蔵のキャラが強烈過ぎて、
視聴者から憎まれること間違いなし。
こいつが、時の老中・水野忠邦を操り
水野が失脚しそうになると、
途端に裏切ります。
この2人のコンビを柱に、
民間、大奥、いろんな立場の人間模様、人間ドラマが繰り広げられます。
歴代の徳川将軍の中でも、
一二を争う、
最も目立たない12大将軍家慶。
だからこそ、水野忠邦が目立ったのでしょうし、
この時代に目をつけた松本清張には脱帽です。
元禄時代や幕末はやっても、
文化文政時代が大河ドラマになったことはないのではないでしょうか。
これに架空の庶民である登場人物の愛憎劇が絡み、なかなか面白く、
手に汗握りました。
鳥居耀蔵がやっぱり憎らしくて、
失脚もしくは、死んで欲しいと思いましたが、
こういう
煮ても焼いても食えない奴は
なかなか死にましぇん。