こんばんは。
ミステリ案内人・稲葉の白兎です。
立て続けに、少女漫画を読むことがありました。
ことの発端は、
山岸凉子のバレエ漫画「テレプシコーラ舞姫」。
演劇大河ロマン・美内すずえの「ガラスの仮面」
を彷彿とさせます。
演劇を通して、少女が成長する物語です。
わりと最初から、ライバルにあたる同い年の少女が出てきます。
美少女・優秀・名門・スター。
しかし、この少女、可愛くないです。
性格悪い。
上から目線。
一人で主人公・北島マヤをライバル視して、
一人で勝手に落ち込んだり、自己満足に浸ったり‥めんどくさそうな人です。
しかも、友人がいません。
男にも女にもモテません。
大人からチヤホヤはされてますけど。
親の七光りで。
一昔前の嫌味なライバル。
「巨人の星」の花形満のようなライバルです。
演劇は上手いけど、どこか機械的で、形式的で、
魅力に欠けます。
かたや主人公は王道。
おっちょこちょいで、スキだらけ。
引っ込み思案。
めちゃくちゃ泥臭い。
感情やコンディションの波が激しい。
なんとなく読者に近い、庶民的なキャラ。
こんな、一見野暮ったいキャラですが、
なんと言っても主人公。
幸運に恵まれます。
出会いに恵まれます。
モテます。
応援されます。
成長します。
テレプシコーラ舞姫も、
主人公は才能的には平凡。
ライバルは、特にいませんが、
本人に闘争心ゼロなので、
同じスクールの同級生や年子の姉。
年子の姉は、ガラスの仮面の姫川亜弓のように、
ある程度、抜けた才能があります。
自分に厳しく、バレエに関してはあらゆる努力を惜しまない。
この人は、自信があるので、
嫉妬心も少ない。
ところが、不幸がこの姉を襲います。
バレエに全てを費やしてただけに、
ビハインドも半端なかった。
かたや、箸にも棒にもかからない主人公は、
いいコーチと出会い、
才能を見出され、ステップアップ。
北島マヤのようにラッキーとアンラッキーが交互に来ては、
芸域が広がり、サヨナラ満塁本塁打を打ちます。
彼女が意識している、ライバルは特にいません。
バレエやってるのに珍しいタイプ。
上手い人に嫉妬せず、応援したりしてます。
メキメキと上達するというより、
意外な才能が開花し、それも自然体で。
気がつくと、勝手に表彰台にいるみたいな、
幸運児です。
年子の姉とは、明暗を分けます。
100%の才能を持ちながら開花させられなかった姉。
眠っていた40%の才能を不死鳥の如く勝手に開花した主人公。
実はもう一人、超天才的なライバルが登場。
さすがの主人公のミラクルをもってしても、
生れながらの才能は、
この空美くみという子に叶いません。
ウサギと亀。
彼女は生れながらにかけっこの速いウサギでした。
幼児の頃より、月影センセも真っ青な鬼の元プリマからスパルタレッスンを受けていたのです。
空美は、天才の姉よりもさらに天才でした。
しかし、残念なことに
家庭の事情により途中でフェードアウト。
正直、年子の姉より、このスーパーライバルの
空美のほうの存在がバツグンで、
引き立て役とは言え、
この少女から目が離せなくなるほど、
魅力的な強烈なキャラクターでした。
この子なくしては、
「テレプシコーラ舞姫」があそこまで読者を引っ張れなかったと思います。
途中でフェードアウトしたのは、
思いっきり作者の都合が絡んでると思います。
内容が子供向きの漫画ではないですね。
この後、以前ブログに書いた木原敏江のインタビュー本を買いました。
木原敏江は、
「山岸凉子」と同じ世代&正統な少女漫画家。
オシャレで絵が上手い。
はっきり言って、内容より絵に満足してしまいそうです。
雨月物語‥ホラーです。
めっちゃ面白かつた。
陰陽師が出てきます。
さて、ラストを飾る少女漫画が
これも実に文化的。
そして、主人公は男。
落語家です。
当たり前ですけど。
ライバルも落語家。
この二人の主人公は、
テレプシコーラ舞姫のように、
明暗を分けます。
かたや師匠から破門され、
かたや襲名し、重鎮となります。
もちろん、重鎮となるのは、
主人公。
主人公は、才能はありません。
えーっ。
そんなこと言っちゃっていいのか⁈
けど、努力はします。
才能がないからこそ努力します。
辛気臭い主人公です。(笑)
努力のヒトですからね。
ライバルのほうは、
天然型。
才能あります。
主人公が持ってないモノ、全部あります。
主人公は嫉妬します。
才能って、
持ってない側のほうが嫉妬するんですね。
才能持ってる人は、
それが当たり前なんで、
執着がありません。
ライバルの男は、
だから平気で、一時の感情に任せて、
行動します。
主人公は、
いつでもウダウダ、グチグチ。
落語が上手くなること、
どんな手段を使ってでも、
落語の神様に愛されようとして、
自分に厳しく、
他人に厳しく、
生きていきます。
この2人の中間がちょうどいいのに(笑)。
あまり、この主人公、
いい性格じゃありません。
才能がないからです。
小さい犬が、
自分が小さいこと知ってるので、
虚勢を張って、
大型犬に息巻く、アレを見てるようです。
でも結局、
ライバルを葬らせ、
自分は落語界の1つのスターになります。
才能がなまじあると、
この「助六」という男のように、
油断したり、慢心したり、
師匠を怒らせたり
自滅しました。
(^^;;
才能って何でしょう?
主人公は、
ひたすら真面目に落語に取り組み、
落語オタク。
女より落語。
落語のためなら、
女と別れるのも平気。
全て落語のため。
ひいては自分のため??
ライバルの助六は、
落語が全てじゃない人。
落語には100%自信がある人。
この漫画を読むと、
才能に基準はないと分かります。
師匠に気に入られるか、
それがすべて。
つまり人間関係ってコトですよね?
助六は軽すぎるし、
菊彦は気難しすぎて息苦しい。
スポーツマンガにライバルは欠かせませんが、
文化系のライバルは、
ドロドロしてますね。
主人公は天才型、超天然型が多い中で、
「落語心中」は、ひたすら努力型。
なんか楽しくなさそう。
菊彦さんには申し訳ないけど。
映像版ではNHKドラマで岡田将生くんがイイ男丸出しで好演してますが
彼女にはなりたくないですね。
この主役の男性の側にいる人は色々と大変そうです。
だから、松田さんという温和な世話人がどうしても登場するんですね。
面白いです。
バランスが。




