こんばんは。
ミステリ案内人・稲葉の白兎です。
超話題作、キムタクの「マスカレードホテル」を
観てきました。
この話の主流は、
原作者が東野圭吾というところからもわかるように、
ホテルものではなく、ミステリです。
予告を見る限り、
この中に犯人がいる!!
と宣伝してます。
チラシに出てる主役の2人を除き、
容疑者はほぼ20人。
アガサ・クリスティの
「オリエント急行」の倍じゃないか!!
オリエント急行は、子供の頃、買いました。
そして、
容疑者のあまりの多さに、
途中で読むのをやめました。
登場人物は、当たり前だけど外国人。
それが12人も出てくるんですから、
小学生の時ですから、そりゃもうイヤになりますよ。
事件が起こる前から、ヘトヘトと言いますか。
推理、
ムリですから!
大人の今でも、原作読む気にはなりません。😞
でも同じイギリスのカタカナ人名が出てくる
「そして誰も‥」はなぜか大丈夫でした。
容疑者は10人。
そして私は中学生。
話にスピード感があった。
そして、容疑者のキャラが立っていた!
どうしてこんなにも違うのかはさておき、
マスカレードホテルの容疑者は約20人。
挫折したオリエント急行の倍!
まともな推理できるのか?
させてくれるのか?
やつぱり最高でも10人が限度じゃね?
杞憂が当たりました。
当たっても、何の意味もないですが。
これは、マスカレードホテルは、
実は、
犯人探しのストーリーではありませんでした。
😞
だって、
最初に半分のキャストが、警察関係者なんです。
私めはチラシを見ながらワクワクしていたのに、
最初の5分でその半分の登場人物は、
もう容疑者でなくなりました。😭
走者一掃。
しかも、どんどん期待したものと遠ざかる一方。
殺人はなかなか起きないは、
出てくるのは、ホテル用語で言うスキッパー、
不良客のオンパレード。
それはそれで、
ホテルものとして見たら面白いんですよ。
ホテルマン出身の作家・森村誠一のファンだった頃、
「巨大ホテル」の裏と表について
さんざん読まされましたから。
森村氏のエッセイを読むと、
ほぼホテルマン時代の愚痴。(笑)
作品は作品で、
初期はホテルが舞台のものが多く、
ホテル用語や説明が満載。
「銀の虚城(ホテル)」を読めば、
高度成長期の、客室300を超える巨大ホテルの、
客と企業の珍プレー好プレーが赤裸々に描かれてます。
芸能人同士の逢引き方法も、
時間差で来ようと、
部屋を遠くしようと、
バレバレらしいです。
カンでわかるらしいです。
フロントを数年やれば、
人間観察のプロ。
森村誠一氏いわく
「客の横暴には、ある程度耐えられる。
耐えられないのは、上司だ!」
そもそもホテルマンは、なりたくてなったのではなく、
未曾有の就職難で、
そこしか就職先がなかったらしいです。
青山学院山岳部。
山岳部はサークル、いわゆる部活ですが、
青学出てて、就職先がホテルだけとは、
いくら就職難の時代でも、とは思いますが。
赤坂のニューオオタニのフロント時代が長かつたらしいです。
‥なので、話は逸れましたが、
彼の初期の作品を読んでいたので、
マスカレードホテルに出てくる不良客との珍プレー好プレーは、
そんなに目新しいものではありませんでした。
というか、
これは、
ホテルものだ、
そういう目線で見たほうが楽しめます。
私めのような、
筋金入りのミステリ・オタクからすると、
全くフェアじゃありません。
犯人探しできません。👮♂️
なぜなら、
昔読んだアルセーヌ・ルパンの名作?
「虎の牙」とほぼ一緒だからです。
殺人事件というふんだんな謎を仕掛けといて、
犯人、最後に出るなんて、
本格推理小説として
あり得ないでしょ?
😡
「虎の牙」よ、ふざけんな〜〜。
最初のサスペンスは何だったの?
まあ、モーリス・ルブランのルパンシリーズは、
本格ものではなく、
冒険ものですから。
本格ものとして名高い「8、1、3」も、
乱歩の大人の本格推理で鍛えられると、
犯人バレバレですけどね。
映画マスカレードホテルは、
アンフェア
アンフェア
つまり、
サスペンスなんです。
ハラハラ・ドキドキが主流。
なので、
犯人探しとして観たら、
真っ逆さまに墜落。
そもそも燃料を積んでない飛行機なので。
ホテルマンものとして
観てください。
サスペンスものとしてみれば、
面白いです。
くれぐれも推理してはいけません。
できないけどね。
それだけが言いたいのです。
東野圭吾は、元は本格作家だったのに、
売れだしてから
本格ミステリではなくなりましたね。
まだ人気がなかった頃、
「昔、私が死んだ家」を連載で読んだ時、
この作品はすごい!
と、毎月、カッターで切ってホチキスで留めてました。
連載が終了した後、
一冊の作品として楽しめるように。
まさか、
あの東野圭吾がメジャーな作家になるとは!
作品を見る目はありますが、
作家を見る目はありません。
昔の東野圭吾は好きでした。
最近の彼の作品はまるで読んでません。
本格推理作家ではなくなっているはずです。
メジャーと本格が両立した作家は、
江戸川乱歩とアガサ・クリスティ。
本格推理ものだけを最初から最後まで書き通したのは
日本では鮎川哲也のみ。
鮎川哲也、知ってます?
知ってたらマニアです。⭐︎✨
なんていうか、
哀しいですけど、
本格ものは、映像化が難しいです。
つまり今回の映画は期待を裏切られました。
こんな映画が観たかったのだ!
待っていたのだ!
甘かったですか?
それはないでしょう。
私の周りの人は、
ふだん、ミステリファンでない知人たちの誰もが
「観たい!」と言ってました。
別にキムタクファンではないです。
私めの周りにキムタクのファンはいないし、
稲葉の白兎めは、
キムタクの出る映画を見たのは、
まるで初めてです。
やはり宣伝は思わせぶりでしたか?
どうして本格ものを映像化してくれないんでしょう?
松本清張の「ガラスの城」は、
センセの作品では滅多にない
バッリバリの本格推理小説。
犯人探し。
犯人当て。
超ハイグレード。
なのに、
マイナーなのがいい例です。
タイトルが良くないんですよね。
センセらしく題名を「黒いナントカ」にすればよかったのに。
変にカタカナを使ったものだから、
内容とズレてしまいました。
話が逸れました。
結論。
超話題作「マスカレードホテル」は、
ミステリではないです。
少なくとも狭義のミステリの範囲ではない。
「姉さん、事件です」
のホテルものです。
東野圭吾の原作のほうを読んだ方が身のためです。
