こんばんは。
大河ドラマ「西郷どん」は、
松本清張を中心としたミステリ案内人・稲葉の白兎です。
松本清張は、
「点と線」の大ヒットから、
社会派推理小説の巨匠といったところですが、
私は、清張氏の一番の才能は、
「歴史小説」「時代小説」にあると思ってます。
ドキュメントに強いイメージです。
それは、
「ある小倉日記伝」
「鷗外の碑」
など、森鴎外の評伝など、
他の人が追求してない領域に深ーく足を突っ込んでいるところですね。
考古学もそうです。
学者と言っていいです。
そんな松本清張の「私説日本合戦譚」は、
やはり素晴らしい。
視点・視座がいいですね。
大河ドラマ「西郷どん」は、
西郷隆盛が主人公にもかかわらず、
肝心の、
征韓論
西南戦争
がきちんと描かれておりませんでした。
林真理子が
ボーイズラブ
戊辰戦争
に重点を置いてましたから。
幕府を倒し、明治維新になってから
急速に精彩を欠いていく西郷さんを
表すのは、難事だとは思います。
例えば、秀吉を主人公にしたら、
朝鮮出兵や、秀次一族惨殺なんかは
描けないのと一緒。
だからといって、
大久保利通を悪く描いても始まらない。
松本清張が選んだ最後の「合戦」は、
西南戦争。
文字通り国内最後の戦争。
選んだ理由は、それ以外に、
本人が西郷に詳しかったのでは？
森鴎外
江藤新平
など、九州の人に異様に詳しいのは、
サラリーマン時代、小倉支局ににいた
ということと決して無縁ではないと思います。
デビュー作からして
「西郷札」ですから。
西郷札とは、
さいごうさつと読みます。
西南戦争で資金難に陥った西郷さんが
乱発した軍票、国債です。
もう一度、この「西南戦争」のページを読み返してみました。
スッキリしました。
きっかけ、は大事です。
政府での地位
薩摩での立場
も理路整然とまとめられ、
司馬遼太郎の10巻に及ぶ超大作「翔ぶが如く」
をまるで短縮したように、
要点だけを書いてました。
一言で言うと、
西南戦争は
「暴挙」。
しかも、仕方なく担がれたのか、
むしろ居場所を求め、
薩摩隼人を道連れにしたのか、
未だにわからないことも、
そのまま表現しています。
そして、
常に西郷さんは、
薩摩の武士
のことしか眼中になかったことも。
清廉潔白を絵に描いたようなキャラクターの西郷さんですが、
むしろ、
少しくらいお金に興味があり、
女に興味があったほうが
廟堂では、あそこまで岩倉や木戸と対立しないで済んだんじゃないかと思います。
薩摩の武士をひいきし過ぎて、
そのクレームは
主に大久保利通が引き受けることに。
政府の連中は、大久保も含めて
関ヶ原以降、薩摩という特殊な独立国家を
人間関係を、
甘く見ていました。
認識が足りなかった。
テレビではワザと大久保が引火したみたいな描かれ方ですが、
直接彼が関わっていたとは思われません。
西郷は軍人として能力を発揮する人で、
官僚ではありませんでした。
廟堂内では、策士もいて、
だんだん政府がイヤになったんでしょう。
でも彼がいなければ廃藩置県がうまくいかなかったことは確か。
政府でもお荷物になり、
鹿児島でも久光になじられでは、
犬連れて隠遁したくなる気もわかります。
挙句に起こした西南戦争は、
根性だけで戦うという、無謀・絶望の極み。
どこかで自主的に終止符が打てなかったもんでしょうか？
兵力差があり過ぎる割には、
終戦まで半年もかかっています。
三傑の木戸孝允は、その悩みで倒れ、
死んだほどです。
ちなみにこれら、西南戦争関係者で
松本清張が興味持つ人物がいます。
大山綱良です。
西郷の幼馴染で、
政府にいながら、
西郷党で、
私学校はもちろん、
西南戦争でも陰で資金提供などで
後方支援をした人。
言い逃れは出来ず、
最期は東京で斬首されました。
今回のドラマでは、
北村有起哉さんが演じた役です。
大山という姓は
大山巌という西郷の従兄弟もおり、
混乱するところではあります。
翔ぶが如くでは、
蟹江敬三が演じてました。
西郷さんは、
大山綱良に対してずいぶんと淡白でありました。
無理やり頼んだというよりは、
資金提供は、大山の自発性から来ているようです。
私学校支援はともかく、
戦争の支援までしたことは、
どういう罪が待っているか、
友人にそこまで西郷が斟酌しなかったのは、
ずいぶん冷酷だと松本清張氏は感想を述べています。
良く言えば、
そこまで人を自発的にさせる西郷の人間的魅力があったということなんでしょうか。
やりようによっては、
例えば単身で上京すれば、
岩倉や大久保が慌て、少しは思い通りになったのではないか、とも述べています。
1人紅白はまた次回。🐰