こんばんは。

稲葉の白兎です。

松本清張の「砂の器」。

社会派のイメージが強いですが、
これは、
犯人探しもの。

犯人は、読者に知らされていません。

容疑者は5人。
最終的には、
アイツかアイツ?

ヌーボーグループという新進気鋭の芸術家集団が5人出てきます。

しかも、江戸川乱歩の「地獄の道化師」のように、引っかけ問題ならぬ引っかけ犯人が出てくる。

AとB、どちらが犯人?

最初に読んでから15年後に読むと、
あれ?
犯人誰だっけ?

多分、この2人のうちどちらかだろうけど、
どっち⁈

どちらも性格が良くない。
1人は女を利用して、逆玉の輿に乗ろうとし、

1人は、水商売の女と付き合ってるくせに、
外聞が良くないから、世間に隠してます。

2人ともクズ野郎なんですが、
何でそんな奴に女が引っかかるかと言えば、
時代ですね。

肉食女子ではないんです。

男の支えになることを無上の喜びとする、古風な
絶滅危惧種。

特に甘いマスクとは書いてないけど、
女をその気にさせる才能があるんでしょう。

江戸川乱歩の「三角館の恐怖」の右蛭峰家の健作老人の息子たちも、
ルックスと感性で女を惹きつけ、
どこか浮世離れしています。

努力、苦労、勤勉の2文字が見事に抜け落ちています。

森川弁護士が冒頭ハッとした美女・鳩野桂子も
次男・丈二に首ったけという残念な美女。

男に貢ぐタイプの、

今風にダメンズ・ウォーカー。

ダメンズにした張本人は叔母の穴山弓子。
おそらく若い時、健作と何かあったかもしれません。

浮世離れした右蛭峰家と対照的に、

見た目と性格も平凡そうな
良助。
真面目が取り柄の鳩野芳雄。
いわゆるつまらない男。
それと猿のような奇妙な猿田執事。
乱歩らしさはこの人の描写を通じて現れます。

しかし、それぞれの世帯主は逆のキャラ。

右蛭峰は単純で人の良い健作老人。


左は、ケチで用心深い康造老人。

双子という設定だけど、
顔も含めて共通項ゼロの双子。

犬神家も真っ青な不条理な先代の遺言状。

血の繋がりゼロ。

橋の下で拾った双子をセッセと育て、
大金持ちになるも、健康を害して早死に。
康造の息子たちは全員養子。
良助と桂子は兄妹で、他は血の繋がりなし。

お金の繋がりだけで、彼らは陰気な屋敷に住み、出て行く気ゼロ。

しかしですねえ、
この話は実は後半戦の最後がめちゃくちゃスリルなんでんです。
乱歩もそこが気に入って日本に紹介したのではないのでしょうか。


明智は必要以上に、
康造がチェックした小額紙幣の目印に注目しました。

婿の鳩野芳雄は、泥棒犯人にわからないように小さな印を書けばいいと提案しました。

あくまでも目印。
別に頭文字を書けなんて言ってないのです。

ところが実際にはKの文字が書き込まれました。

おそらく康造のイニシャル。

エレベーターで健作老人が殺されて以来、
犯人はなんとしても健作側が100パーセントもらう側に回る事にこだわってると推理。

わざと遺言の書き換えは
この日しかチャンスがないと、
明智は森川に、家族に触れて回ることを指示。

犯人は必ずや盗みに来るはず。

家族には、上手いこと言って、泥棒を捕まえようと皆に協力させます。

明智は、犯人に届きさえすればそれでよかったのです。

猿田は怖くて三角館から逃げ出し、

弓子と桂子は女同士、旅館に泊まります。

明智は丈二、健一、良助、芳雄にそれぞれの持ち場に就かせ、泥棒を迎え撃ちます。