こんばんは。
ミステリブロガーの稲葉の白兎です。
「三角館の恐怖」は、
ホンモノの原作者が外国人だからか、
いろんな意味で江戸川乱歩らしくない特殊な本格推理に仕上がってます。
ポプラ社の三角館には、明智探偵が登場しましたが、大人向けの原作には、
明智探偵は登場しません。
もちろん、探偵の役割の人物は出てきます。
子供も出てきません。
不具者も浮浪児も売春婦も出てきません。
ただ、一人だけ、三角館には乱歩らしい怪人キャラが登場します。
灰色ソフト帽の男。
左・蛭峰家の康造老人を訪ねた謎の怪人。
そいつは応対に出た猿田執事をアッパーカットで気絶させ、
拳銃で康造を射殺して逃げました。
のちに健作老人に遺産相続問題で呼ばれた森川弁護士が
殺人の後、明智探偵に話をするのです。
双子の老人の因縁や家族構成はもちろん話します。
森川弁護士いわく
「ふしぎな人々」。
現場検証した明智は、
犯人は射殺後、外に出たように見せかけて、
実は、蛭峰家に戻ってきたと言います。
雪の足跡がそれを物語っていると。
灰色ソフトとスーツはそう遠くない場所に脱ぎ捨ててありました。
初めから犯人は、一歩も屋敷から出ていない。
玄関は一つなので、
左蛭峰家か右蛭峰家はわからない。
そうなると
灰色ソフト帽は犯人の変装。
見た人は猿田のみ。
「主人を呼んで参ります」
猿田執事が康造に話し、
康造が奇妙に思いながらも玄関に行くと
「誰もおらんじゃないか」
灰色ソフト帽はおらず。
「そんなはずは‥」
それが2回続いて
「ワシは今、大事な相談の最中なのだ。
邪魔してもらっては困る!」
いもしない人物を取り次いだように言われてしまう猿田執事。
応接室で待つように言ったのに、またしてもいなくなる客。
「どなた様ですか。
ここで隠れん坊をされても困ります」
3回目でソフト帽に殴られ、昏倒する猿田。
翌日右蛭峰家の人間にも犯人の変装に心当たりのある者はいませんでした。
それどころか、
夢でも見たんじゃないのか、
本当なのか?疑われる始末。
しかもその変な格好の男、
どことなく猿田自身に似てるのです。
先代から仕えてる割には、
猿田執事には威厳みたいなものが全くありません。
どことなく、外見や雰囲気が怪人じみています。
大事な相談とは、遺言状の問題と小銭泥棒の問題で、後者の相談で婿の知恵を借りてる時にちょうど謎の灰色ソフト帽の訪問があったわけです。
手提げ金庫から、少しずつ小銭と小額紙幣がなくなっていることに、
老人は気がついていました。
金額はわずかですが、放っておけません。
相談された婿は犯人探しの知恵を授けます。
果たして、
明智は、婿の芳雄から話を聞いた後、
手提げ金庫を開けます。
千円札をチェックすると、
小さなKの字の印がついたお札がありました。
ほんとにわずかな、見逃してしまいそうな小さな小さな印でした。
明智には犯人が誰かわかっているようでした。
健作老人がエレベーターで殺され、
遺言が振り出しに戻ったかと思いきや、
森川弁護士が大事な証書をなくしてしまいます。
真っ青になる森川ですが、
森川の勘違いでした。
取り上げたのは明智でした。
犯人が盗みに来るから、
先手を打っておいたのです。
証書がなくなったり、出たり。
目まぐるしく変わる遺言の行方。
その度に情緒不安定になる相続者たち。
その反応を冷静に観察する明智。
出てきました!
健作老人の遺志は有効かつ健在。
半分相続になるとわかった途端、
怒った顔して照れ隠しに喜んだり、
泣き出す相続者もいました。
健作がめちゃくちゃ怒ったので、
減ることには諦めムードの健一。
そんな中、
小銭泥棒の見当がついた明智は、
当人を呼び出します。
「君が康造さんの手提げ金庫からお金を盗んでいたんだね?」
それは、まごうかたなき執事の猿田でした。
猿田の持ち紙幣にKの文字が入ってたのです。
「ソフト帽の変装も君かね?」
「ち、違います!
お金を盗んだことは認めます。
でも断じて旦那さんを殺したのは私じゃありません!
いつの頃からか、
やめられなくなりました。
悪いとわかっているんですけど、
これは病気なんです」
怪人にふさわしい年配の猿田老人執事。
私はてっきり、ソフト帽の男は、
猿田の一人二役の狂言かと思いました。