こんばんは。

ミステリ案内人・稲葉の白兎です。

江戸川乱歩のすごさは、
楽しい推理小説や怪奇小説、少年冒険小説を
数多く発表したことより、
内外のミステリーを紹介したことにあるのでは?

ロジャー・スカーレットの
「エンジェル家の殺人」は、
秀逸とはいえ、
本国では見向きもされなかった無名の作家の作品。
それを乱歩がめちゃくちゃ気に入り、
わが日本に紹介。

「三角館の恐怖」という、怪奇性を期待させるタイトルで、
ポプラ社の少年シリーズの最後に登場。

おそらく、少年ものでは一番難しかったのでは?

他の作品でも、犯人を外しまくってた私は、
というより、推理をしなかったんですが、
本当にこの作品の犯人には驚きました。

動機が分かると、
ガッテン、ガッテン、ガッテン!

うわべだけでは、全くわかりようがなかったです
性格、アリバイ、適性など無意味。

全員怪しいといえば怪しいし、
コレといって名指しするような怪しい人もいない。

健作老人が殺されてからは、わけがわからなくなりました。

犯人は、お金を手に入れる側なのか?
失う側なのか?💰

先代の、子供に長生きしてほしいという意味で作った遺言状は、
双子の子供たちを地獄に突き落としました。

仲が悪くなりました。
相手に自分の健康状態を知られまいと、
屋敷にベルリンの壁を作って家庭内別居。

決着がつくまでは、屋敷で有価証券や地代などで十分裕福に暮らすことができ、
ある意味、働かなくなるのは当然です。

でも、どちらかが死んだら、共通の資源はなくなり、無一文です。

息子に焚きつけられた健作は、弟のところへ行って、
生き残った方は、死んだ方の遺族にも財産を分けることにしよう。
と、言います。

しかし、康造はいいとは言いませんでした。
この問題はもう少しよく考えよう
と、引き伸ばすかのようでした。

康造はケチ。
でも悪人ではないです。

その夜、康造は書斎で婿の芳雄と話し込んでいました。

「健作の話、どう思う?」
「同情は禁物です」

「だよねー(嘘)
ところで、この家に泥棒がいて、
時々、手提げ金庫から小銭がなくなるんだ。

かれこれ、一週間だ。
大きいお金も気になるが、
小さいお金の紛失はこたえる。
犯人を知りたい。
どうしたら犯人を捕まえられる?」

「お札に目立たないように印をつけておけば、
その財布を持ってる人が泥棒です」

「さすが芳雄、アッタマいい!(嘘)

そこへ執事の猿田が来客を伝えます。

康造が玄関を見てきます。

ところが誰もいません。
「いなかったぞ。どんな人?」

「灰色のソフト帽と灰色のスーツで‥」

ポーズまで取って説明します。

それから、また猿田が来客を知らせます。
玄関に行くといません。

「猿田、本当にいたのか?
今、芳雄と大事な話の最中だ。
いちいち中断させないでくれ」

珍しくキレる康造。

「本当にいたんです。おかしいなあ」

不思議そうな猿田老人。
先代からいる高齢の執事です。

三度、ソフト帽は来ました。


猿田は見ました。
ソフト帽の男が康造をピストルで撃つのを。

健作に頼まれた弁護士・森川は、
名探偵・明智小五郎の旧友。

不思議な双子の老人の物語と今夜の出来事を聞かせます。

風前の灯だった健作一家は、
一気に、遺産相続することに。

康造の遺族に気を使い、

森川に財産の半分を分ける遺言状に書き換えます。

「良助、安心しろ。ちゃんとお前たちにも財産を分けるぞ」


しかし、その善意を嗅ぎつけた次男の丈二が、
猛反対します。
「こんな奴に気を使うことありません。
独り占めしちゃってください、お父さん」

丈二は美形で、女たらしの遊び人。

待ったをかけたのは、他ならぬ明智小五郎。

「ちょっとそれは待ちましょう。
今、書き換えるのはキケンです!」🚨

半分に分けるのが危険?

明智のアドバイスも虚しく、
健作は、良助と息子たちの間に挟まって
ついにキレてしまいました。

良助が待ったを小耳に挟み、

「何で延期するんですか?
ホントに延期するんですか?
永遠に延期するんですか?

結局、アンタは財産を僕らに分けるのが惜しくなったんでしょう?
ねえ、そうでしょう?」


「もう沢山だ〜〜〜〜!
ふざけんな!
押すと言ったら今夜、押してやる!」

夜中に森川に電話がかかります。

「来て、来て、今すぐ!!
ハンコ、押すから。
半分に分けてやるから!
ケチだなんて、言わせないぞ」


森川弁護士がどんなに止めても
聞きません。

ついに意地になった健作は誰にも止められませんでした。

家中、大騒ぎ。

森川弁護士を迎えに行くために、
室内エレベーターに乗る健作。

待っていたのは、死、でした。